• アプリケーションノート

ソリッドコア粒子および MaxPeak™ Premier HPS テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムによる分離効率の向上

ソリッドコア粒子および MaxPeak™ Premier HPS テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムによる分離効率の向上

  • Kenneth D. Berthelette
  • Jonathan E. Turner
  • Jamie Kalwood
  • Kim Haynes
  • Waters Corporation

要約

高効率カラムを使用することで、ピーク幅が低減され、分離が向上します。これにより、対象ピークが相互に分離され、可能性のあるバックグラウンドおよび添加剤ピークからより適切に分離されるため、ピーク波形解析および同定が簡単になります。分離効率を向上させるには複数の方法があります。1 つは、固定相の充塡粒子のサイズがより小さいカラムを使用することです。もう 1 つの方法は、より長いカラムを使用することです。ただし、いずれのオプションを使用する場合にも、欠点はシステムの動作圧力によって制限されることです。これ以外の方法としては、ソリッドコアまたは表面多孔性粒子(SPP)の使用が挙げられます。これは、動作圧力を損なうことなく効率を改善できることが証明されています1

ここで示されている試験では、3 種の分析種の混合液における分離効率を改善する方法の段階的なステップが示されています。まず、分離ベースラインを設定するために、全多孔性粒子(FPP)をステンレススチール製ハードウェアに充塡したカラムを使用して分析を行いました。第 2 に、効率の尺度であるピークキャパシティを向上させるために、SPP を充塡したステンレススチール製カラムを使用して、同じ分析を実行すると、分離効率が向上しました。第 3 に、MaxPeak Premier High-Performance Surfaces(HPS)カラムハードウェアに FPP を充塡したカラムで分析を実行しました。これには、ステンレススチール製カラム内で金属イオンに結合する可能性のある分析種のピーク形状と効率を向上させる革新的なテクノロジーが採用されています。最後に、この分離効率をさらに改善するために、MaxPeak Premier HPS カラムハードウェアを用いた SPP を充塡したカラムを使用して、最終的な分離を行いました。4 つのクロマトグラフィー条件すべてが、ピークキャパシティの計算とともに表示されています。SPP および MaxPeak Premier HPS テクノロジーの両方を採用することで、ピークキャパシティで最大 25% の増加が実現しました。

アプリケーションのメリット

  • MaxPeak Premier カラムハードウェアを使用することで、分析種のピークがよりシャープに
  • SPP による効率改善
  • HPS カラムと SPP カラムの両方を使用することで、グラジエント分離のピークキャパシティが増加

はじめに

多様な分析ワークフローでグラジエントメソッドを使用することで、バックグラウンドピークおよび添加剤ピークから対象分析種を保持および分離しています。メタボロミクスやバイオ分析から医薬品の不純物試験に至るまで、さまざまなワークフローで、高効率グラジエントメソッドを使用して分離目標が達成されています。Neue の概説に示されるように、グラジエント分析の効率はピークキャパシティによって測定されます2。 分離効率を向上させる方法はいくつかあります。例えば、粒子径を 2 µm 未満に低減する方法や、より長いカラムの使用などが挙げられます。ただし、いずれの改善法においても、分析システムの背圧が高くなります。SPP の使用など、その他の改善により、分析法の変更や LC システムの変更が不要になり、システムの背圧を増加させることなく、分離効率を向上させることができます。SPP には、表面多孔性のシェルで囲まれたソリッドコアが含まれています。この粒子の形態により、分析種のバンドの縦拡散と渦拡散が低減されるため、ピーク幅が低減されることで、カラム内の拡散が軽減し、効率が向上します1

さらに、問題の分析種によっては、MaxPeak Premier カラムを使用することでピーク幅が狭まり、分離効率が向上する場合があります。MaxPeak Premier HPS テクノロジーは 2020 年に発売され、酸性分析種と接触する金属表面での相互作用を軽減するように設計された、独自のカラムおよびシステムハードウェアです3-5。 PEEK ライナー付きスチール製カラムや移動相添加剤の使用など、分析種と表面の相互作用を低減するために使用される他のテクノロジーとは異なり、MaxPeak Premier HPS テクノロジーは、管理されたカラム製造プロセスの一部であり、カラムの性能と圧力耐性が維持されます6。 MaxPeak Premier HPS カラムハードウェアは、ヌクレオチド、リン酸化ペプチド、ステロイドリン酸などのリン酸化化合物の効率とピーク形状の改善に特に効果的であることが示されています7-9。 MaxPeak Premier HPS カラムハードウェアと SPP の両方を組み合わせることで、グラジエントメソッドの分離効率を飛躍的に向上させることができます。

このアプリケーションノートでは、CORTECS ブランドのカラムに採用されている MaxPeak Premier HPS テクノロジーと SPP を組み合わせることにより、分離効率を向上させる方法を実証しています。まず、分析種の混合物を、標準ハードウェアと全多孔性 BEH 粒子を使用した XBridge™ BEH C18 XP カラムで分析しました。次に、同様に標準ハードウェアを使用した CORTECS C18 カラムと XBridge Premier BEH C18 カラムで混合液を分析しました。両方のテクノロジーを個別に使用することで、分離効率の著しい向上が達成されました。そのため、最後の実験では、CORTECS Premier C18 カラムを使用して、2 つのテクノロジーを組み合わせました。各カラムに対して繰り返し注入(n = 5)を実行し、平均ピーク幅を計算しました。次に、すべてのカラムについてピークキャパシティを計算し、比較しました。

実験方法

サンプルの説明

ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾン、フォステムサビルをそれぞれ 10 µg/mL 含むサンプルを、1 mg/mL のストック水溶液から調製しました。最終的なサンプル組成には 1% 未満のアセトニトリルが含まれていました。

LC 条件

LC システム:

カラムマネージャおよび PDA 搭載 ACQUITY™ Premier QSM

検出:

UV @ 254 nm

カラム:

XBridge Premier BEH C18、2.1 × 50 mm、2.5 µm(製品番号:186009827)

XBridge BEH C18 XP、2.1 × 50 mm、2.5 µm(製品番号:186006029)

CORTECS Premier BEH C18、2.1 × 50 mm2.7 µm(製品番号:186010441)

CORTECS C18、2.1 × 50 mm、2.7 µm(製品番号:186007365)

カラム温度:

30 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

3.0 μL

流速:

0.5 mL/分

移動相 A:

移動相 B:

アセトニトリル

移動相 D1:

2% ギ酸水溶液

グラジエント条件:

表 1.

表 1.  元のモノグラフ分析法と最新化した分析法のグラジエントプロファイル

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower™ 3 Feature Release 4

図 1.  分析種の化学構造

結果および考察

XBridge BEH C18 XP カラムは、最も一般的なカラムケミストリーの 1 つです。ベースパーティクルの堅牢な設計により、高圧および高い温度や移動相 pH に耐えることができるため、分析法開発の出発点として理想的です。このカラムは開始点として適切ですが、試験分析種と条件によっては、より高性能なカラムの使用が適切な場合があります。図 2 に示されているように、XBridge BEH C18 XP カラムを使用したクロマトグラフィーの結果は妥当であり、UV 検出は良好です。フォステムサビル(1)およびリン酸ベタメタゾン(2)は両方とも、USP テーリング係数 1.67 および 2.09 という重度なテーリングが示されています。さらに、この分離に対して計算されたピークキャパシティは、図に示されている平均ピーク幅に基づいて 201 であると判断されました。

図 2.  XBridge BEH C18 XP カラムを用いた 3 種の分析種の分離。ピークキャパシティの計算値を示しています。
1)フォステムサビル、2)リン酸ベタメタゾン、3)ベタメタゾン

ピーク形状の最も悪い化合物は両方とも金属に吸着しやすいため、分離を改善するために検討できる点が 2 つあります。1 つは CORTECS パーティクルカラムの使用です。粒子のソリッドコア設計により、分離効率が向上します。もう 1 つのルートは、MaxPeak HPS カラムテクノロジーを使用することです。これにより、特に金属に吸着しやすい化合物の分離効率が改善されるはずです。次に、これらの化合物を分離するために、CORTECS 2.7 µm と XBridge Premier BEH C18 カラムの両方を使用しました。図 3 には、以前 XBridge BEH C18 XP カラムで得られた結果と、これらの試験で取得したクロマトグラムの比較を示しています。

図 3.  XBridge BEH C18 XP、XBridge Premier BEH C18、および CORTECS C18 カラムを使用した 3 種の分析種の分離。ピークキャパシティの計算値を示しています。
1)フォステムサビル、2)リン酸ベタメタゾン、3)ベタメタゾン

まず、XBridge Premier BEH カラムで得られた結果を確認すると、フォステムサビルとリン酸ベタメタゾンは両方ともピーク形状が大幅に改善されています。HPS カラムを使用した場合、これらの化合物の USP テーリング係数は、それぞれ 1.23 および 1.26 に低減されました。USP テーリング係数および平均ピーク幅が大幅に低減されています。すなわち、ピークキャパシティも増加することを意味します。また、ステンレススチール製ハードウェアを使用している CORTECS C18 カラムを見ると、ピーク形状も改善されています。フォステムサビルおよびリン酸ベタメタゾンの USP テーリング係数は、それぞれ 1.57 および 1.91 です。CORTECS 粒子を充塡したカラムを用いた分離のピークキャパシティは、10% 強の増加を示しています。

これらのデータに基づくと、特に金属に吸着しやすい分析種の場合、ピーク形状の改善は主にハードウェアとの二次相互作用により左右されると考えられます。金属に吸着しやすい分析種では、CORTECS 粒子により全体的な性能は向上しますが、ピーク形状は改善されません。理論的には、HPS テクノロジーと高効率 CORTECS 粒子の両方を組み合わせることで、最良の結果が得られるはずです。これらの化合物を分離するために CORTECS Premier C18 カラムを使用して、元の分離と結果を比較しました(図 4)。

図 4.  XBridge BEH C18 XP および CORTECS Premier C18 カラムを使用した 3 種の分析種の分離。ピークキャパシティの計算値を示しています。
1)フォステムサビル、2)リン酸ベタメタゾン、3)ベタメタゾン。

ピーク形状を調べると、CORTECS Premier カラムからは、フォステムサビルおよびリン酸ベタメタゾンについて USP テーリング値が 1.22 および 1.20 の非常に対称的なピークが得られています。これは、XBridge Premier BEH C18 カラムで見られた結果と同等です。ただし、CORTECS Premier カラムを使用したピークキャパシティは、XBridge Premier BEH C18 カラムで得られるピークキャパシティよりも高くなります。金属に吸着しやすい分析種のピーク形状を改善する HPS テクノロジーと CORTECS 粒子の組み合わせにより、分離で最高の結果が得られます。効率の高い分離は、あらゆるワークフローにおいて有利ですが、非常に複雑なサンプルの場合はほぼ必須条件となります。CORTECS 粒子と MaxPeak Premierハードウェアの組み合わせにより、特に金属に吸着しやすい分析種の場合に、最高の分離効率が得られます。

結論

カラム効率は、全体的な性能および品質に直接関連するため、最大化する必要性が高い多くの分析メソッドにおいて必須の側面となります。グラジエント分離の効率測定は、ピークキャパシティ、または存在する分析種の平均ピーク幅に基づいて、グラジエント内で溶出できるピークの数を測定することによって行われます。ピーク幅が狭まるため、ピークキャパシティが大きいほど分離効率が高くなります。特定の固定相およびカラムハードウェアを使用することで、最小限の選択性の変化で、分離性能を向上させることができます。SPP の粒子は、カラム拡散が最小限に抑えられ、効率が改善されるように特別に設計されているため、分離効率を改善できます。また、MaxPeak HPS テクノロジーは、特に金属に吸着しやすい分析種とカラムハードウェアの間の二次的相互作用を低減することにより、よりシャープで対称的なピークをもたらし、分離効率を改善できます。MaxPeak HPS カラムに SPP を充塡することで、分離が大幅に改善され、多くのワークフローや分離にメリットをもたらすことができます。

参考文献

  1. Guiochon G, Gritti F. Shell particles, trials, tribulations and triumphs.Journal of Chromatography A. (2011) 1915–1938.
  2. Neue U. Theory of peak capacity in gradient elution.Journal of Chromatography A. (2005) 153-161.
  3. Delano M, et al. Using Hybrid Organic-Inorganic Surface Technology to Mitigate Analyte Interactions with Metal Surfaces in UHPLC.Analytical Chemistry.(2021) 5773–5781.
  4. Walter TH, et al.Modifying the Metal Surfaces in HPLC Systems and Columns to Prevent Analyte Adsorption and Other Deleterious Effects.LCGC Supplements.(2022) 28–34.
  5. Lauber M, et al.Low Adsorption HPLC Columns Based on MaxPeak High Performance Surfaces (HPS).Waters White Paper.720006930, Jan 2023.
  6. DeLoffi M. A Comparison of MaxPeak Premier Columns with MaxPeak HPS Technology versus PEEK-lined Column Hardware.Waters Application Note.720007210, Jan 2023. 
  7. Berthelette K, Shiner S, Walter TH, Nguyen JM, Turner JE.Improved Separation of RNA Nucleotides, Nucleosides, and Nucleobases on Atlantis Premier BEH Z-HILIC Columns.Waters Application Note.720007324, Jan 2023 
  8. Nguyen JM, Rzewuski SC, Lauber M. Enhancing Phosphopeptide Quantitation Using ACQUITY Premier Peptide CSH C18 Columns.Waters Application Note.720007211, Jan 2023. 
  9. Tanna N, Plumb R, Mullin L. Improvements in Sensitivity for Quantitation of Steroid Phosphate Drugs Using ACQUITY Premier System and ACQUITY Premier Columns.Waters Application Note.720007095, Jan 2023. 

720007872JA、2023 年 3 月

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