• アプリケーションノート

ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムを使用したリン酸化ペプチドの定量の向上

ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムを使用したリン酸化ペプチドの定量の向上

  • Jennifer M. Nguyen
  • Susan C. Rzewuski
  • Matthew A. Lauber
  • Waters Corporation

要約

LC 分離では、多くの分析種(特に負電荷を持つ分析種)が電子不足の金属酸化物表面に吸着し、頑健な分析が困難になります。ペプチドの場合、アスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性の負に荷電した残基を元々含んでいることがあります。さらに、リン酸化などの翻訳後修飾によってペプチドに酸性の特性が加わり、吸着による損失が悪化することがあります1

この課題を回避する一般的な方法として、移動相添加剤やキレート剤の使用が挙げられます。強酸によってリン酸化化合物の回収率が改善しますが、この方法は、MS 検出を必要とする分析に悪影響を及ぼすことがあります2,3。 キレート化剤を使用することで金属の分析種の吸着が防げますが4、MS 強度の減少や溶解度の問題が欠点となります5

最近の研究により、ACQUITY Premier カラムおよび MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)を使用して、ペプチドなどの分析種の回収率と再現性を改善できることが示されています6。 このテクノロジーにより、サンプル損失を悪化させる可能性のある金属-分析種間相互作用が軽減されることが実証され、この目的において、チタンより有効なハードウェアテクノロジーであることが証明されています7。 このアプリケーションノートでは、リン酸化ペプチドの分析に使用する ACQUITY Premier カラムの可能性をさらに実証しています。これは、プロテオミクス分析やキナーゼ阻害剤に関わる研究にとって興味深いものになる可能性があります8。 

アプリケーションのメリット

  • 従来のカラムテクノロジーと比較して回収率が向上
  • カラムコンディショニングの必要性が最小限または不要に
  • 再現性と分析法の頑健性が向上
  • 質の高い MS スペクトル

はじめに

クロマトグラフィーにおいては、分析種の金属表面に対する吸着が大きな問題となり、ピークテーリング、分析種の低回収率、再現性の低下の原因になる可能性があります。これらの金属イオンを介する相互作用の結果として分析種が失われると、結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。この吸着効果により、低質量負荷では回収が困難であることが示されおり、低い検出下限および定量下限を要件とするアッセイに悪影響を及ぼす可能性があります9

リン酸化ペプチドの定量的バイオアナリシスは、高い回収率が必要なアプリケーションの 1 つです。タンパク質のリン酸化は、多くの生物学的経路における細胞内シグナル伝達を調節する重要な翻訳後修飾(PTM)であるため、この PTM の特性解析、検出、定量は非常に重要です10。 多くの場合、リン酸化を検出するために、タンパク質をリン酸化ペプチドに分解して、セリン、スレオニン、およびチロシン残基のリン酸化がモニターされます11。 しかし、多くの場合、リン酸化ペプチドは非リン酸化ペプチドほど存在量が多くありません。そのため、分析を行うには濃縮が必要です10。 さらに、リン酸化ペプチドは金属に吸着することが知られており、検出や定量がさらに困難になります1

このアプリケーションノートでは、MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーを採用した ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムを使用して、リン酸化ペプチドおよび非リン酸化ペプチドの分析における回収率および定量性能を調査します。この有機/無機ハイブリッド表面テクノロジーにより金属表面との相互作用を遮断することで、吸着による損失が最小限に抑えられます9,12。 今回、MaxPeak Premier テクノロジーと従来のカラムとで初期性能を比較したところ、両方のカラムをコンディショニングした後でも、MaxPeak Premier カラムの方を使用する場合回収率と再現性が改善することが実証されました。さらに、回収したフラクションのプレートリーダーによる定量に基づく定量的な比較を行ったところ、MaxPeak Premier テクノロジーでは、初回の注入でも二重リン酸化ペプチドがほぼ完全に回収されることがわかりました。LC システムの金属相互作用を排除した ACQUITY Premier システムを使用することで、このようなカラムの効果の詳細な試験が可能になりました。 

実験方法

初期のカラム性能

サンプル前処理

アンジオテンシン I(配列 DRVYIHPFHL)の凍結乾燥ペレットを 10% DMSO を含む 0.1% TFA 水溶液に再溶解して濃度 771 pmol/μL にし、さらに 60 pmol/μL に希釈して 3 種類のペプチド混合液を作成しました。 

エノラーゼ T37(配列 YPIVSIEDPFAEDDWEAWSHFFK)の凍結乾燥ペレットを 10% DMSO を含む 0.1% TFA 水溶液に再溶解して最終濃度を 353 pmol/μL にし、さらに 60 pmol/μL に希釈して 3 種類のペプチド混合液を作成しました。 

二重リン酸化インスリン受容体(配列 TRDIpYETDpYYRK で分子量 1782.6 Da)の凍結乾燥ペレットを 0.1% ギ酸に再溶解してコンディショニングのステップで使用する濃度 500 pmol/μL のサンプルを作成し、さらに 60 pmol/μL に希釈して 3 種類のペプチド混合液を作成しました。 

60 pmol/μL の等量のアンジオテンシン I、エノラーゼ T37、および二重リン酸化インスリン受容体ペプチドを使用して、各ペプチドの最終濃度が約 20 pmol/μL の 1:1:1 等モル混合液を調製しました。

データ処理と分析

3 本の ACQUITY UPLC Peptide CSH カラムを 3 本の ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムと比較しました。最初の 4 回の注入で得られた初期カラム性能(ピーク面積、グラジエントピークキャパシティ、保持時間)を評価して平均を取ってから、高質量負荷のペプチドでコンディショニングし、5 回目の注入を行いました。回収されたペプチドの相対量(%)を、UV クロマトグラム中のピーク面積から推定しました。 

5-FAM 標識ペプチドの蛍光分光分析定量

サンプル前処理および検量線の作成

蛍光分光分析の標準として使用するため、生体分子に蛍光特性を付与する色素 5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)で標識したペプチド(配列 5-Fam-AKRRRLpSpSLRA、分子量 1831.9 Da)を、移動相 A は 79% で移動相 B は 21% の溶液に連続希釈して、最終濃度 1 pmol/μL および 0.1 pmol/μL にしました。リニアダイナミックレンジが 0.02 pmol ~ 0.80 pmol 質量負荷の検量線を Molecular Devices(カリフォルニア州 San Jose)の Gemini XPS 分光光度計を使用して作成しました。データの取り込みと分析には SoftMax Pro 6.5.1 を使用し、励起波長 443 nm、蛍光波長 516 nm で分析を行いました。 

データ処理と分析

ACQUITY UPLC Peptide CSH カラム 2 本を ACQUITY Premier Peptide CSH CC18 カラムと比較しました。各セットの初回使用において、5-FAM 標識ペプチドの分離を 4 回行いました。5-FAM 標識ペプチドを含むフラクションを、各セットの 4 回目の注入時に回収し、得られたペプチドの回収率を蛍光分光分析定量によって決定しました。5-FAM 標識ペプチドのこれまでのすべての分析に、UV ピーク面積の比率と 4 回目の注入/分離で回収されたフラクションの測定濃度に基づいて、回収率(%)が割り当てられました。 

LC 条件

LC システム:

ACQUITY Premier(QSM)

検出:

UV @ 214 nm

バイアル:

MaxPeak HPS を採用した QuanRecovery バイアル(製品番号:186009186)

カラム:

ACQUITY UPLC Peptide CSH C18 カラム、130 Å、1.7 μm、2.1 × 50 mm (製品番号:186006936)

ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラム、130Å、1.7 μm、2.1 × 50 mm (製品番号:186009487)

カラム温度:

60 ℃

サンプル温度:

4 ℃

注入量:

1.0 μL(サンプル)、10.0 μL(コンディショニング)

流速:

0.2 mL/分

移動相 A:

0.1 %(v/v)ギ酸水溶液

移動相 B:

0.09%(v/v)ギ酸含有アセトニトリル

グラジエントテーブル

MS 条件

MS システム:

Xevo G2-XS QTof

イオン化モード:

ESI+、分解能

取り込み範囲:

m/z 100 ~ 2000

キャピラリー電圧:

2.5 kV

サンプルコーン電圧:

80 V

イオン源オフセット:

80 V

イオン源温度:

120 ℃

脱溶媒温度:

500 ℃

脱溶媒ガス:

800 L/時間

データ管理

クロマトグラフィーと MS ソフトウェア:

データ取り込みには Empower 3 FR4 または MassLynx 4.1、

データ分析には UNIFI 1.8

結果および考察

初期のカラム性能

この調査では、MaxPeak Premier テクノロジーを用いてリン酸化ペプチドの分離と回収率の評価を試みました。リン酸化ペプチドは、ステンレスやチタンなどの金属表面に吸着することが知られています。そこで、同じロットの固定相を充塡した従来の ACQUITY UPLC Peptide CSH C18 カラムまたは ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムを使用して、二重リン酸化インスリン受容体ペプチドであるアンジオテンシン I とエノラーゼ T37 で構成されるペプチドの等モル混合物の LC-UV-MS 分離について分析しました。

通常、ペプチドの逆相分離はギ酸(FA)、ジフルオロ酢酸(DFA)、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸性の移動相モディファイヤーを使用して行います。  ギ酸は弱いイオン対試薬であるため、MS 分析に適しています13。 ペプチド分離では、分離にギ酸を用いることによって金属結合相互作用をより受けやすくなる可能性もあります。このため、0.1%(v/v)ギ酸(FA)を含む水移動相と 0.09%(v/v)ギ酸(FA)を含むアセトニトリル移動相を使用しました。最初の 4 回の注入で得られた初期のカラム性能(ピーク面積、グラジエントピークキャパシティ、保持時間)を評価してから、ペプチドの高質量負荷でカラムをコンディショニングし、5 回目の注入を行いました。カラムや LC の流路をコンディショニングする方法として、サンプルを高負荷で注入することで大量のサンプルでカラムや LC 内の結合部位を飽和させる方法がよく取られます。MaxPeak High Performance Surfaces を採用した ACQUITY Premier システムで、カラム温度 60 ℃ および流速 0.2 mL/分で試験を行いました。これにより、カラムハードウェアの影響をより直接的に観察することが可能になりました。高質量負荷によるカラムコンディショニングの直後の 4 回目と 5 回目の注入で得られた代表的な UV クロマトグラムを図 1 に示します。アンジオテンシン I およびエノラーゼ T37 のグラジエントピークキャパシティとピーク面積は、すべてのカラムの最初の 4 回の注入にわたってほぼ同等でした。一方、二重リン酸化インスリン受容体ペプチドに関しては、従来のカラムの初回使用において、このペプチドはほとんど回収されませんでした(図 1A)。 

これに対し、ACQUITY Premier カラムでは、カラムのコンディショニングの有無に関係なく、すべての注入で再現性のある性能が得られました(図 1B)。コンディショニング後の平均ピーク面積、グラジエントピークキャパシティ、保持時間の変化は 3% 未満でした。従来のカラムをコンディショニングした後、二重リン酸化ペプチドの回収率が向上しましたが、それでもピーク面積は ACQUITY Premier カラムの 39% に過ぎませんでした。この結果から、さらなるコンディショニングが必要であること、あるいは従来のカラムテクノロジーでは完全な回収が不可能であることが示唆されます。

図 1.(A)ACQUITY UPLC CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムまたは(B)ACQUITY Premier CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムを使用して得られたアンジオテンシン I、エノラーゼ T37、および二重リン酸化インスリン受容体の等モル混合物の 4 回目の注入(カラムコンディショニング前)および 5 回目の注入(カラムコンディショニング後)の UV クロマトグラム。分離は、ACQUITY Premier システムで、流速 0.2 mL/分、カラム温度 60 ℃、FA 添加移動相、および質量負荷 20 pmol で行いました。 

インスリン受容体ペプチドにはリン酸化部位が 2 つあるため、その回収率は、これらの官能基による負電荷の増加と金属ハードウェア表面への吸着の程度の増加により、悪化した可能性があります。これらの結果を見ると、アンジオテンシン I とエノラーゼ T37 はカラムハードウェアの選択の影響を受けていないように見えるかもしれません。分離中に収集した質量スペクトルを見ると、異なる結果が示されました。実際、コンディショニング後のカラムで分離した 3 ペプチド混合物についても質量分析を評価しました。分析はエレクトロスプレーイオン化と Xevo G2-XS QTof を使用して行いました。TIC で得られたデータは、ペプチドのピーク面積に関して UV データと相関していましたが、ペプチド質量スペクトルは対照的で、ACQUITY Premier カラムでは質の高い MS データが容易に得られました。従来のカラムを使用した分離では、各ペプチドのすべてのチャージ状態に対して多量の鉄付加イオンが生じていました。エノラーゼ T37(図 2A)の質量スペクトルからわかるように、これらの分離には、おそらく金属製ハードウェア表面から浸出した鉄付加イオンが含まれています。エノラーゼ T37 のチャージ状態 4+ の場合、鉄付加イオンのピークが最も存在量の多いイオンシグナルです(図 2A)。鉄付加イオンのレベルは、チャージ状態 3+ が 5.9%、チャージ状態 2+ が 9.5% で、チャージ状態 4+ はメインピークの 2 倍以上でした。一方、ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムで行った分離では、鉄付加イオンが 80 ~ 90% 減少しています(図 2B)。  

また、ACQUITY Premier カラムでは、低チャージ状態のイオンが観測されました。これはおそらく、鉄イオンの存在が脱溶媒ガスの効率とペプチドのイオン化に影響を及ぼし、高チャージ状態が多くなるためと推測されます。1 つの鉄原子と 1 つのプロトンの単純な追加であっても、エレクトロスプレープロセスの間に鉄イオンが存在すると必ずチャージ状態の分布が歪むと考えられます。得られた結果によると、チャージ状態 2+ のエノラーゼ T37 の相対存在量は、従来のカラムでは 19.5%、ACQUITY Premier カラムでは 29% でした。チャージ状態 3+ に対するチャージ状態 2+ の相対量を比較すると、ACQUITY Premier カラムでは、従来のカラムと比較してより低いチャージ状態の存在量が 50% 多いことがわかりました。低レベルの金属混入物がペプチド分離に及ぼす影響はここでは見られないかも知れませんが、ペプチド質量スペクトルの質に影響を及ぼす可能性があることは明らかです。 

図 2.  以前にコンディショニングした(A)ACQUITY UPLC CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムまたは(B)ACQUITY Premier CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムを使用して得られたアンジオテンシン I、エノラーゼ T37、二重リン酸化インスリン受容体ペプチドの等モル混合物の分離で得られたエノラーゼ T37 の質量スペクトル。分離は、ACQUITY Premier システムで、流速 0.2 mL/分、カラム温度 60 ℃、FA 添加移動相、および質量負荷 20 pmol で行いました。 

5-FAM 標識ペプチドの蛍光分光分析定量

LC-MS によるペプチドの定量は、バイオ医薬品の創薬と開発、およびリン酸化カスケードを変化させることができる低分子薬物の創薬に用いることができる確立された手法です。ここでは、追加の電荷が付与された修飾ペプチドの回収が難しいことがわかりました。二重リン酸化インスリン受容体ペプチドの場合に見られたように、負に荷電したリン酸基などによる修飾を受けると、ペプチドが金属に対して親和性を持ち、回収が極めて困難になることがあります。この試験では、MaxPeak Premier テクノロジーによるメリットの定量を試みました。 

回収されたペプチドの量を正確に測定して比較するために、蛍光分光分析検出を使用し、オフラインプレートリーダーアッセイを使用して、定量用の検量線を作成しました。当初、二重リン酸化インスリン受容体の回収率の定量分析を継続する予定でしたが、このペプチドには強い蛍光色素が含まれず、また蛍光標識すると溶液中で不安定かつ不溶性になりました。そこで、5-FAM 標識したより安定な二重リン酸化ペプチドを使用しました。5-FAM 標識ペプチドの 4 回の注入を、まず従来の LC システムと従来のカラムで行いました。4 回目の注入において、5-FAM 標識ペプチドを含むフラクションを回収し、固有の成分の 2 種類のセットを得ました。このアプローチを、ACQUITY Premier システムコンポーネントと ACQUITY Premier カラムの組み合わせでも繰り返しました。 

リン酸化インスリン受容体ペプチドの分析で見られたペプチドの回収率が、5-FAM 標識リン酸化ペプチドに変換されました。MaxPeak Premier テクノロジーの使用により、より良好な回収が検出されました。興味深いことに、このリン酸化ペプチドでは、回収率の差の程度が、以前の実験で同じクロマトグラフィー条件で使用したリン酸化ペプチドほど顕著ではありませんでした(図 3A)。この結果の説明として、5-FAM 標識ペプチドでは、リン酸化が、負に荷電したリン酸基が立体障害をより強く受けるチロシンではなく、別のアミノ酸セリンで起こっているためである可能性があります。また、二重リン酸化インスリン受容体ペプチドは、金属に対するより強い親和性とクロマトグラフィー吸着を促進する 5-FAM 標識ペプチドよりも高い負の表面電位を有する可能性もあります14。 さらに、一方のペプチドが他方のペプチドよりも容易に表面吸着を起こすような配座効果にも違いがある可能性があります。 

図 3.(A)従来の LC システムおよび ACQUITY UPLC CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムまたは ACQUITY Premier CSH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm カラムを使用して得られた、5-FAM 標識ペプチドの 4 回目の注入の UV クロマトグラム。(B)6 種類の濃度(0.02、0.05、0.10、0.20、0.40、0.80 pmol/μL)のオフライン蛍光分光分析により作成された、4 回目の 5-FAM 標識ペプチドフラクションの検量線および定量測定値。(C)4 回目の注入で得られた UV ピーク面積の比率とフラクションについて測定された濃度に基づいて計算された 5-FAM 標識ペプチドの 4 回の注入にわたる個々のセットおよび平均のセットの回収率。分離は、流速 0.2 mL/分、カラム温度 60 ℃、FA 添加移動相、および質量負荷 20 pmol で行いました。 

図 3B に示す検量線を使用して、5-FAM 標識ペプチドの回収率を計算しました。図 3A に示すデータでは、ACQUITY Premier カラムおよび ACQUITY Premier LC コンポーネントの最初のセットでリン酸化ペプチドがほぼ完全に回収されており、回収率は 97.9% でした。これは従来の LC システムで使用していたカラムより 73% 多い値です。さらに、ACQUITY Premier システムでの ACQUITY Premier カラム分析の 1 回目と 2 回目のいずれにおいても、4 回の注入にわたる回収率にほぼ変化がないことがわかりました。この新しい LC セットアップでは、平均回収率は 93.5% ~ 94.2% の範囲でした(図 3C)。一方、従来の LC システムと組み合わせた従来のカラムでは、60.1% ~ 66.4% の範囲で、低くよりばらつきの大きいペプチド回収率になりました。MaxPeak Premier テクノロジーを用いることで、最初の注入でもリン酸化ペプチドについて非常に高い回収率が得られたことにより、リン酸化ペプチドの分析において、不活性なクロマトグラフィー表面が有用であることが実証されました。 

結論

ここでは、MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーを採用した ACQUITY Premier Peptide CSH C18 カラムにより、リン酸化など酸性の修飾を有するペプチドの回収率と再現性が大幅に改善することが示されました。このデータから、MaxPeak HPS によって得られる表面バリアにより金属イオンに媒介される吸着が軽減するという以前の結果が再確認されました。従来のカラムとは異なり、ACQUITY Premier カラムでは、初回使用時の最初の注入でも一貫した性能が発揮されました。 

酸性の低分子化合物についての以前の観察結果と同様に、今回の試験においても、二重リン酸化ペプチドだけでなく、すべてのペプチドについて、よりきれいな MS スペクトルが得られることがわかりました12。 従来のカラムで得られる質量スペクトルでは、鉄付加イオンの混入が非常に多く見られましたが、ACQUITY Premier カラムでは、鉄付加イオンがほとんど見られませんでした。 

これらの結果から、MaxPeak Premier テクノロジーは、ペプチドベースのアッセイ(特にリン酸化の同定および定量を目的としたアッセイ)におけるクロマトグラフィー性能の向上に有用であることがわかりました。このテクノロジーを使用することで、リン酸化ペプチドやその他の負に荷電した分子のバイオアナリシスアッセイの頑健性と感度が向上することは間違いありません。   

参考文献

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720007211JA、2021 年 3 月

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