• アプリケーションノート

粒子径を 2.5 µm に最新化した後の MaxPeak™ Premier カラムを用いたアセトアミノフェンアッセイの USP モノグラフの再現性の向上

粒子径を 2.5 µm に最新化した後の MaxPeak™ Premier カラムを用いたアセトアミノフェンアッセイの USP モノグラフの再現性の向上

  • Gabrielle T. Zabala
  • Kenneth D. Berthelette
  • Weiqiang Gu
  • Kim Haynes
  • Waters Corporation

要約

USP モノグラフは、特定の医薬品の品質保証のためのガイドラインを提供します。これらのガイドラインには通常、有効成分のアイデンティティー、効力、純度の概要が記載されており、不純物分析や溶出試験などの特定のその他の試験が含まれる場合があります。これらの試験を作成してバリデーションすると、このガイドラインを使用してあらゆる種類の薬理学的サンプルおよび溶液を試験することができます。USP モノグラフは、医薬品の評価において優れており、製薬業界の製品評価のための汎用分析法を提供しています。これらの分析法は非常に厳格であり、サンプル前処理、移動相の調製、またはカラムの機能と性能におけるわずかな変更が、結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。このことが、材料のバッチの失敗から規制機関による調査に至るまで、重大な結果につながる可能性があります。このような事態が発生する可能性を避けるため、信頼性が高く長持ちするカラムを試験に使用することがこのプロセスにとって不可欠です。MaxPeak Premier カラムに採用されている MaxPeak Premier High-Performance Surfaces(HPS)テクノロジーは、分析種とカラムの金属表面の間の非特異的吸着による相互作用を低減することにより、ばらつきが低減し、結果の信頼性が向上するように設計されています。

このアプリケーションノートでは、風邪薬および咳止め薬中のアセトアミノフェン濃度の評価に関する USP モノグラフを、General Chapter <621> ガイドラインに従って最新化しました。最新化した後、MaxPeak Premier カラムとステンレススチール製カラムを使用して比較を行いました。いずれの種類のカラムを使用しても、モノグラフのすべての要件が満たされ、合格しましたが、MaxPeak Premier カラムでは、すべての注入にわたってばらつきが大幅に低減していました。

アプリケーションのメリット

  • MaxPeak Premier カラムの使用による注入間の再現性の向上
  • 再現性の高い結果により、ピーク同定における疑念が解消

はじめに

米国薬局方(USP)により、医薬品、食品成分、およびその他の栄養補助食品の品質、強度、純度、およびアイデンティティーについて基準が設定されています。USP モノグラフは、新規ジェネリック製剤の試験の手順およびこれに関わる規制を目的に作成されています。日常使用されるほとんどの市販薬は、その薬が最初に特許切れしたときに開発された USP モノグラフを使用して試験されています。これらの USP モノグラフでは、薬が最初に開発された時期によって、古いカラムテクノロジーが使用されている可能性が高くなります。このようなカラムテクノロジーでは、長いカラム構成(4.6 × 250 mm)および/または大きな粒子径(5 µm)が使用されている場合があります。このようなカラムを使用すると通常、分析時間が長くなり、注入あたりに使用する溶媒が多くなります。幸いなことに、小さい粒子径(2.5 µm)を使用する新しいカラムテクノロジーにより、より高い効率が得られ、分析時間の短縮と移動相の消費量の減少につながります。一方、USP モノグラフの最新化は、適切に行わないと複雑になる可能性があり、これが最新化をためらう理由の 1 つとなっています。USP General Chapter <621> は、最新化をよりアクセスしやすくするためのガイドラインと手順が提供しています1。これらのガイドラインでは、分析時間、流速、カラム仕様など、モノグラフを適切に最新化するために変更してもよいパラメーターが記載されています1

さらに、USP モノグラフのシステム適合性要件が厳しいことを考慮すると、使用する装置によって信頼感と安心感を得られることが必要です。このことは、分析種と金属表面の間の非特異的吸着などの外的要因が存在する場合、困難になる可能性があります2。 この相互作用により、問題の分析種の再現性が低下したり、ピーク形状が悪くなったりすることがあります。MaxPeak Premier カラムは、分析種の金属への吸着を軽減することを目的として特別に開発されており、ピーク形状と回収率が改善するとともに、再現性が向上しています2

このアプリケーションノートでは、Waters™ MaxPeak Premier カラムのメリットをステンレススチール製カラムと比較して記載しています。問題の分析種が一見、金属の存在の影響を受けていないように見える場合であっても、特定の試験の結果と再現性に影響する可能性のある金属への非特異的吸着を軽減することの重要性について説明します。

実験方法

サンプルの説明

USP モノグラフ分析法で概説されているように、3 種類の別々の溶液を作製しました。標準溶液とシステム適合性標準試料には、精製済み標準試料由来の 0.2 mg/mL のアセトアミノフェンが含まれます。サンプル溶液には、0.2 mg/mL のアセトアミノフェンが含まれます。アセトアミノフェンのサンプルは市販の咳止めシロップから取得しました。3 種類の溶液はすべて、希釈液として 45/55 メタノール/水を使って調製しました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ H-Class Plus(PDA 検出器搭載)

検出:

UV @ 254 nm

カラム:

XBridge™ BEH™ C18、2.5 µm、2.1 mm × 100 mm(製品番号:186006031)

XBridge Premier BEH C18、2.5 µm、2.1 × 100 mm(製品番号:186009828)

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

0.8 µL

流速:

0.42 mL/分

移動相 A:

100% メタノール混合時

移動相 B:

100% 水

アイソクラティック条件:

45/55 メタノール/水

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower™ 3 Feature Release 5 Hotfix 1

結果および考察

USP General Chapter <621> ガイドラインに従ってモノグラフを最新化した後、ステンレススチール製カラムと MaxPeak Premier カラムの両方を使用して、標準溶液、システム適合性標準試料、サンプル溶液をそれぞれ 5 回(n = 15)注入しました。両方のカラムで分析した 3 種類の溶液すべての最後の注入を図 1 に示します。青色のピークは MaxPeak Premier カラムの結果、オレンジ色のピークはステンレススチール製カラムの結果です。システム適格性溶液と標準溶液の両方で、USP テーリング、保持時間の相対標準偏差、ピーク面積の相対標準偏差、アセトアミノフェンの割合の要件は同じです3。 USP テーリングは、アセトアミノフェンのピークにおいて 2.0 を超えてはならず、相対標準偏差(%RSD)が 2.0% を超えてはなりません3。 サンプル中に検出されるアセトアミノフェンの割合は 90 ~ 110% の範囲である必要があります3。 使用するそれぞれのカラムについて、モノグラフの基準が満たされています。製剤化された咳止めシロップ中のアセトアミノフェンの強度の基準が USP モノグラフに記載されています。一見して、MaxPeak Premier カラムにより、正確性が向上し、より再現性の高い結果が得られていることは明らかです。

図 1.  ACQUITY H-Class システムで 2.1 × 100 mm、2.5 µm の XBridge BEH C18 Premier カラムおよびステンレススチールカラムを使用する最新化した USP モノグラフ条件を用いて得られた、アセトアミノフェンの標準溶液、システム適格性標準試料、およびサンプル溶液のクロマトグラムの重ね書き。テーリングおよび相対標準偏差の値は、すべての注入の平均値です(n = 15)。

15 回の注入にわたって、MaxPeak Premier カラムでの保持時間の %RSD は 0.09% で、ステンレススチール製カラムでの保持時間の %RSD は 1.59% です。図 1 に示すように、クロマトグラムの重ね書きにおいて、MaxPeak Premier カラムでは 3 サンプルすべてが完全に重なり合っていますが、ステンレススチールカラムでは少なくとも 1 サンプルで中心がずれていることがわかります。この場合、ステンレススチール製カラムで最もピークが異なるのはサンプル溶液で、これにはアセトアミノフェンだけでなく、経口溶液由来のその他の有効成分や添加剤も含まれています。同様に、MaxPeak Premier カラムを使用した場合のピーク面積の %RSD は 0.03% で、ステンレススチール製カラムを使用した場合のピーク面積の %RSD は 0.91% とより大きいです。最後に、サンプル溶液中に検出されたアセトアミノフェンの割合には、試験した 2 種類のカラムで 0.4% というわずかな違いがあります。サンプル中のアセトアミノフェンの割合は、MaxPeak Premier カラムでは 93.0% ですが、ステンレススチール製カラムでは 93.4% という計算になります。いずれのカラムも合格要件の範囲内にあるため、この差は無視できます。MaxPeak Premier カラムでの 3 種類のサンプルの 15 回の注入すべてが一貫していることを考えると、サンプルと移動相の間に溶媒不適合はないことがわかります。アセトアミノフェンと経口溶液の有効成分の間に、カラムの金属表面との相乗的相互作用が存在し、結果として、ステンレススチール製カラムで見られるような保持時間のシフトやばらつきが生じる可能性があります。

MaxPeak Premier カラムでは、サンプルと金属製ハードウェアの間の二次的相互作用を軽減することにより、複数のサンプルにわたるこのアッセイの再現性が向上しています。アセトアミノフェン自体は金属表面のカラムと相互作用しないかも知れませんが、サンプル中の他の成分の作用により、アセトアミノフェンの保持にわずかなばらつきが生じる可能性があります。ステンレススチール製カラムはすべての要件に合格しているものの、MaxPeak Premier カラムでは、すべての種類のサンプルにわたって再現性が明らかに向上しており、結果が正確でバッチリリース検査に適していることに疑う余地はありません。 

結論

米国薬局方によって設定された基準が、医薬品が安全性および力価の要件を満たしていることを保証するために広く使用されています。ただし、これらの分析法では多くの場合、あまり効率がよくないカラムを使用する古い LC テクノロジーが用いられます。USP General Chapter <621> の最近の変更により、新しいカラムテクノロジーとより小さな粒子径を使用して、分析時間を短縮させ、溶媒の使用量を削減することができるようになりました。これらの変更により、MaxPeak Premier カラムなどのより新しいカラムハードウェアを使用することもできます。

このアプリケーションノートでは、USP モノグラフの最新化に際して、ステンレススチール製カラムによって要件を満たす結果が得られる一方で、MaxPeak Premier カラムを使用することで、試験における正確性と再現性に関する疑念が最終的に解消されることを実証しています。MaxPeak Premier カラムを使用することで、アッセイ結果やピークテーリングに悪影響を及ぼすことなく、試験したサンプルすべてにわたって保持時間とピーク面積のばらつきが大幅に低減しました。このことから、MaxPeak Premier カラムがさまざまな分析に適していることが実証されました。

謝辞

本アプリケーションノートの開発および作成全体を通してガイダンスとサポートを提供してくれた Kenneth Berthelet と Weiqiang Gu に感謝いたします。

参考文献

  1. USP General Chapter <621>.Accessed April 25th 2022.https://www.usp.org/sites/default/files/usp/document/harmonization/gen-chapter/harmonization-november-2021-m99380.pdf
  2. Berthelette K., Turner J., Kalwood J., Haynes K. Improving Separation Efficiency with CORTECS™ Premier Column that Feature Solid-Core Particles and MaxPeak Premier HPS Technology.Waters Application Note. 720007872, 2023.
  3. USP monograph: Acetaminophen, Dextromethorphan Hydrobromide, Doxylamine Succinate, and Pseudoephedrine Hydrochloride Oral Solution.Accessed April 25th 2022.https://online.uspnf.com/uspnf/document/1_GUID-36376BA5-52C8-469D-AC2E-E17BD8223113_1_enUS?source=Search%20Results&highlight=acetaminophen

720007938JA、2023 年 7 月

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