• アプリケーションノート

MaxPeak™ High Performance Surfaces HPS テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムを使用した、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のクロマトグラフィー分析の改善

MaxPeak™ High Performance Surfaces HPS テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムを使用した、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のクロマトグラフィー分析の改善

  • Brianna R Clements
  • Paul D. Rainville
  • Waters Corporation

要約

NSAIDs は、世界中で何百万人もの消費者が日々使用する一般的な鎮痛抗炎症薬です。世界中の消費者の安全性を確保するため、NSAIDs 製造の品質管理部門をサポートする分析法は非常に重要です。このアプリケーションノートでは、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムを用いた NSAIDs の迅速分析法を開発します。この分析法は、一般的に使用される NSAIDs の分離および検出において、再現性と直線性が高いことが証明されています。さらに、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムでは、ステンレススチール製カラムハードウェアを採用した従来の CORTECS カラムと比較して、クロマトグラフィー性能が向上していました。 

アプリケーションのメリット

  • MaxPeak テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムでは、従来のステンレススチール製のシステムおよびカラムと比較して、クロマトグラフィー性能が向上している
  • この分析法により、複数の NSAID 化合物を 2 分未満で分析できた
  • MaxPeak テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムでは、従来のステンレススチール製クロマトグラフィーシステムと比較して、ピークのテーリングが最大 25% 低減し、シグナル高さが 39% 向上

はじめに

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、鎮痛解熱のために使用される一般的な市販薬です1.2。 NSAIDs の人気や広範に使用されていることを考慮すると、安全性と有効性に関する品質管理試験は非常に重要です。本研究では、NSAIDs を迅速に分離する分析法について記載します。さらに、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムを用いる NSAIDs 分析の改善点を、標準のステンレススチール製の装置およびカラムを使用した場合と比較して実証します。

NSAIDs は、カルボン酸を含む分析種です。ステンレススチール製ハードウェアの金属表面がカルボン酸基と相互作用し、悪いクロマトグラフィー結果を引き起こすことがあることが、以前に説明されています3。 これらの影響は、強酸や塩化物を含む移動相の存在下でステンレススチール製システムが腐食するにつれて、より明らかになります。最近、ウォーターズコーポレーションは、新しい MaxPeak HPS テクノロジーを採用した MaxPeak Premier カラムを導入しました。MaxPeak HPS テクノロジーは、これらの望ましくない金属と分析種の相互作用を防ぐことにより、これらの課題のいくつかを軽減することがわかっています4,5,6

本研究では、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムを使用して、一般的な NSAIDs を分離および定量する迅速な分析法を開発します。また、同じ NSAIDs の標準試料の複数回の注入を比較することにより、CORTECS Premier カラムのロットの一貫性についてテストしました。 

実験方法

サンプルの分離法の説明

フェノプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、イブプロフェンは Sigma Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入しました。すべての NSAIDs は、100% メタノールを希釈液として用いて、1 mg/mL になるように個別のストック溶液として調製しました。次に、フェノプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン標準試料のストック溶液を、濃度 50 µg/mL になるように希釈して合わせ、NSAIDs 混合標準試料を作製しました。イブプロフェンは、270 nm での UV 吸光度が低いことを考慮して、500 µg/mL になるように NSAIDs 混合液中に混合しました。ストック溶液は 2 ℃ ~ 8 ℃ で保存し、室温に平衡化させてから分析に使用しました。

直線性サンプルの説明

ジクロフェナクの検量線用ストック標準溶液は、濃度 1 mg/mL になるように調製し、100% メタノールを使用して 10 mL メスフラスコ中に希釈しました。次に、5 µg/mL ~ 500 µg/mL のストック溶液からさまざまなキャリブレーション標準試料を調製しました。ストック溶液は 2 ℃ ~ 8 ℃ で保存し、室温に平衡化させてから分析に使用しました。

分析条件

この試験では、MaxPeak HPS テクノロジーを紹介するためにセットアップした ACQUITY Premier LC システムと、従来のステンレススチール製 ACQUITY UPLC I-Class LC の、2 種類の装置セットアップを使用しました。各システムは、コンポーネントが異なるだけで、同じ装置条件を使用して実行しました。 

LC 条件

グラジエントテーブル

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower 3 ソフトウェアビルド 3471

結果および考察

分離法の結果

この分析法は、一般的な NSAIDs の保持および分離において再現性があることがわかりました。10 回の注入後、すべての NSAIDs の面積および保持時間の %RSD が <5% でした(表 1 および表 2)。以下の 10 回の注入のクロマトグラムの重ね描きにより、分析法の性能が明確に示されています(図 1a)。 

表 1.NSAIDs 混合標準試料の面積カウントの %RSD などを含む表 
表 2.NSAIDs 混合標準試料の保持時間の %RSD などを含む表
図 1a.NSAIDs 混合標準試料の 10 回の注入の重ね描きクロマトグラム 

直線性の結果

直線性試験をジクロフェナクについて行ったところ、この分析法の定量的適合性が実証されました。収集した直線性のデータは、品質管理試験に使用できることを裏付けています(図 2)。

図 2.5 µg/mL ~ 500 µg/mL のジクロフェナクの 7 点検量線。この曲線の R2 値は > 0.999 でした。 

システム比較の結果

この分析法をステンレススチール製システムに移管したところ、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムの NSAIDs 分析における改善が明らかになりました。各装置構成に、NSAIDs 混合標準試料を 10 回注入しました。下の図 3a および 3b において、両方のシステムで分析法が正常に実行されていることがわかります。 

図 3a.CORTECS Premier C18 カラムを装着した ACQUITY Premier システムでの NSAIDs 混合標準試料の 10 回の注入中 5 回のクロマトグラム
図 3b.CORTECS C18 カラムを装着した ACQUITY I-Class システムでの NSAIDs 混合標準試料の 10 回の注入中 5 回のクロマトグラム 

図 3a および図 3b のクロマトグラフィーデータの詳細を、それぞれ表 3 および表 4 に示しています。MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムのメリットが、明確に示されています。このテクノロジーにより、テーリングが最大 25% 低減し、高さが 39% 増加しています。

表 3.図 3a のクロマトグラフィーデータ 
表 4.図 3b のクロマトグラフィーデータ 

ロット間再現性の結果

新しい Premier カラムのラインのバッチ再現性を実証するために、NSAIDs 混合標準試料の注入が 3 回行われています。各カラムを Premier システムに取り付け、平衡化した後、標準試料を注入しました。3 つのカラムロットを以下に比較しました(図 4 および表 5)。 

図 4.3 つのカラムロットにおける NSAIDs 混合液のクロマトグラムの重ね描き。ロット A(黒)、ロット B(赤)、ロット C(青) 
表 5.すべてのカラムロットにおける 3 回の注入から算出した分析種の保持時間の平均値 

重ね描きクロマトグラムおよび保持時間の %RSD は、CORTECS Premier カラムが、異なる吸着剤バッチにわたって、信頼性の高い性能を発揮することを示唆しています。これにより、CORTECS Premier カラムを選択したユーザーは自信を持って分析を行えます。 

結論

MaxPeak HPSテクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムの使用により、従来のステンレススチールを用いたクロマトグラフィーのセットアップと比較して、NSAIDs の分析が改善されました。開発した分析法は効率的で、2 分で結果が得られます。CORTECS Premier カラムでは、ピーク形状が大幅に向上し、異なる吸着剤バッチにわたって一貫した性能が得られました。 

参考文献

  1. Gaikwad N, R. Vaishnavi P, Dhaneria S. Assessment of Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug Use Pattern Using World Health Organization Indicators: A Cross-Sectional Study in a Tertiary Care Teaching Hospital of Chhattisgarh.Indian Journal of Pharmacology.2017;49(6):445.
  2. U.S. Food and Drug Administration.Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs (NSAIDs).US Food and Drug Administration [Internet].2020 Dec 31 [cited 2022 Jun 22]; Available from: https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/nonsteroidal-anti-inflammatory-drugs-nsaids.
  3. Walter T, Trudeau M, Simeone J, Rainville P, Patel A, Lauber M, Kellett J, DeLano M, Brennan K, Boissel C, Birdsall R, Berthelette K. Low Adsorption UPLC Systems and Columns Based on MaxPeak High Performance Surfaces.Waters White Papers 720007128
  4. Layton C, Rainville P. IImprovements in Chromatographic Performance for Stability Indicating Methods of Antiviral Drugs with MaxPeak Premier Technology.Waters Application Note 720007487, 2022.
  5. Shah D, Smith K, Yang J, Hancock P. Analysis of Fourteen Organic Acids in Various Beverages Using the ACQUITY UPLC H-Class PLUS and ACQUITY QDa Mass Detector Waters Application Note 720007289, 2021 Aug. 
  6. Waters Corporation.CORTECS Columns, Waters Applications Notebook 720004739 2012. 

720007751JA、2023 年 1 月

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