• アプリケーションノート

細胞培養におけるモノクローナル抗体の力価および凝集の直接的かつ迅速な SEC 分析

細胞培養におけるモノクローナル抗体の力価および凝集の直接的かつ迅速な SEC 分析

  • Stephan M. Koza
  • Ying Qing Yu
  • Waters Corporation

要約

内因性タンパク質の蛍光検出(SEC-FLR)を用いた、分析時間 2.4 分の迅速サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析法を使用した、清澄化した細胞培養サンプル中のモノクローナル抗体(mAb)の力価および凝集(高分子種、HMWS)の直接分析に焦点を当てています。提案している分析法では、LC-MS 分析専用の LC システムでより効率的に展開できる、以前に記載した 200 mM 酢酸アンモニウム(AMA)移動相を採用しています。これは、細胞培養サンプルを分析する際に、カラム寿命を延ばすのに役立つことが分かっています。FLR 検出を使用することで、280 nm の UV 吸光度(A280)を使用する場合と比較して、細胞培養サンプルの注入量を 1/10 以下に削減できます。結果として、サンプルロード量が 50 ng(0.5 µg/µL のサンプル 0.1 µL)以上の場合、細胞培養中の mAb 力価と凝集の両方を容易に追跡できます。一方、A280 検出を使用すると、力価はこの低サンプルロード量で測定できますが、HMWS のレベルは測定できません。 

このハイスループット(HT)で低サンプルロード量の SEC 分析法では、XBridge™ Premier Protein SEC(250Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm)カラムを流速 1.0 mL/分で使用します。ACQUITY™ Premier UPLC システムを使用して、分析法のパフォーマンスと頑健性を評価

アプリケーションのメリット

  • mAb の力価および HMWS の迅速な(2.4 分)SEC-FLR 分析
  • プロテイン A 精製を行わず、細胞培養サンプルを直接注入
  • 1 分析あたり 0.1 µL 以下の細胞培養液を注入する場合、mAb CHO 細胞培養サンプルの分析を 1000 回超行えるまでカラムの予測寿命が延長可能に

はじめに

清澄化した培養細胞中の mAb の力価および HMWS を直接 SEC で分析する分析法を開発しました。通常、細胞培養サンプル中の mAb の HMWS レベルは、プロテイン A アフィニティー精製後に SEC によって評価します。2D-LC プロテイン A と SEC 分析法を使用して力価と凝集レベルの両方を決定するこのアプローチの使用例が報告されています1。 このアプリケーションにおけるプロテイン A 精製の課題の 1 つは、プロテイン A の溶出条件によって HMWS レベルが変わる可能性があることです。これを回避できる可能性のあるアプローチの 1 つが、細胞培養サンプル中の mAb の直接 SEC 分析です2。 mAb およびその凝集体の存在量とサイズが、個々のホスト細胞タンパク質と比較して圧倒的に大きいために、この分析モードが多くの場合、使用可能になりますが、細胞培養サンプルによるカラムの汚れが障害となります。

本研究の発端は、Waters ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å、1.7 µm カラムおよび LC-MS 装置と互換性がある AMA 移動相を使用して、プロテイン A 精製 mAb サンプルの HT SEC 分析を行えることを実証した以前の研究に遡ります3。以前の研究で注目されるのは、部分精製された広範な細胞培養のサンプルを分析したときの SECカラムの長期的なパフォーマンスです。200 mM AMA の抗菌特性が、一定のメリットをもたらしたのではないかと推測されました。

この結果に基づいて、細胞培養中の mAb の直接 SEC 分析が検討されました。これらのサンプルは、取得時には微生物汚染がないはずですが、取り扱い中および保管中、その栄養に富んだ組成により、はるかに汚染されやすくなります。考慮すべきもう 1 つの要素として、清澄化およびろ過した、コンディショニング済みの細胞培養サンプルに含まれる微粒子やその他の成分が混入して SEC カラムが汚れる可能性が挙げられます。そこで、内因性タンパク質の FLR を検出法として使用し、二次的相互作用が最小限でより大きな粒子が充塡された SEC カラムを使用することで、カラムへの注入量を最小限に抑えました。そのため XBridge Premier Protein SEC、250 Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm カラムを使用しました。

このカラムでは、親水性の MaxPeak™ HPS ハードウェア(カラム本体、エンドフィッティング、フリット)が使用され、カバー率が高いヒドロキシ末端ポリエチレンオキシド(BEH-PEO)結合エチレン架橋型ハイブリッド粒子が充塡されています。これにより、カラムとタンパク質サイズバリアント間の結合のレベルが低い SEC カラムが得られ、幅広い移動相組成で低タンパク質ロード量での分析がさらに可能になります。タンパク質-金属間相互作用をさらに低減するため、ACQUITY Premier UPLC システムを使用して分析法開発、性能試験、および頑健性試験を実施しました。

実験方法

サンプルの説明

mAb であるトラスツズマブ(Herceptin™)およびトラスツズマブ-anns(Kanjinti™)を、有効期限が切れてから分析しました。サンプルを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または遺伝子導入していない CHO 細胞の培地(NTM)で、示した濃度に希釈しました。NTM は、Syd Labs, Inc. によってスピナーフラスコ中の遺伝子導入していない CHO-K1 細胞を使用して調製されたもので、使用済み培地を 2 ~ 15 日目にフラスコから回収し(平均細胞生存率約 90%)、プールして 0.2 µm フィルターでろ過しています。

MS 条件

LC システム:

ACQUITY Premier UPLC、クオータナリーソルベントマネージャー(QSM)および CH-A カラムヒーター搭載

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器(5 mm チタンフローセル付き)、

波長:280 nm、ACQUITY UPLC FLR 検出器(励起:280 nm、蛍光:350 nm)。0.6 分にオートゼロをプログラミング。流速 1.0 mL/分の分析法用

バイアル:

ポリプロピレン 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(キャップ付きおよびスリット入り PTFE/シリコーンセプタム付き)、容量 300 µL、100 個入り(製品番号:186002639)

カラム:

XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm カラム + mAb サイズバリアント標準試料(製品番号:176004779)

カラム温度:

25 ˚C

サンプル温度。:

6 ˚C

注入量:

0.1 μL または 1.0 μL。

流速:

1.0 mL/分(実行時間 = 2.4 分)、または指示どおり

移動相:

酢酸アンモニウム、LC-MS グレード(Supelco LiChropur™、LC-MS 用溶離液添加剤、73594)、0.1 µm 滅菌フィルターでろ過、200 mM

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower™ 3(FR 4)

結果および考察

分析法開発

この試験の主な目標は、サンプルの希釈以外の事前処理なしで、清澄化した CHO 細胞培養培地サンプル中の mAb の力価および HMWS を分析するための、信頼性の高い HT 非変性 SEC 分析法を開発することでした。この目標は、XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm カラムおよび流速 1.0 mL/分の 200 mM AMA 移動相を使用することで達成されました。これにより、分析時間 2.4 分で効果的な分離が得られ、内因性タンパク質の FLR でピークを検出することができました。また、前の分析が完全に完了する前に次の分析を開始するために、検出器のオートゼロイベント(0.6 分)を追加しました。これらの組み合わせにより、注入量 0.1 µL を使用した場合、この分析法によって、mAb の力価 0.5 mg/mL の細胞培養サンプルにおいて、1% 以上のレベルの二量体 HMWS(HMWS1)を効果的にモニターできることが実証されました。

mAb モノマーは、細胞培養サンプル中にその固有の SEC 保持時間で A280 によって検出される主要成分です。このことは、精製 mAb(PBS で 1.0 mg/mL に希釈)のクロマトグラムと、遺伝子導入していない培地(NTM)サンプルのクロマトグラムを比較することで明確に実証されます(図 1)。これら 2 つのサンプルについて、主にトリプトファン残基およびチロシン残基に由来するタンパク質の吸収帯である A280 と、DNA および RNA のピークの吸収帯である 260 nm での UV 吸光度(A260)を比較しました。予測されたように、精製 mAb モノマーおよび HMWS1 では、A280 が A260 よりも約 2 倍高くなっています。一方、NTM サンプルでは、A280 と A260 は同等です(図 1)。この結果は、A260 が NTM サンプル中に存在する低レベルの DNA または RNA に部分的に起因することと一致しています。

図 1.  PBS で 1 mg/mL に希釈した精製 mAb(トラスツズマブ-anns)サンプル(mAb)と、遺伝子導入していない細胞培養サンプル(NTM)の SEC-UV 280 nm クロマトグラムおよび 260 nm クロマトグラム。XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm で、200 mM AMA 移動相を流速 0.5 mL/分で使用しました。注入量は 1 µL でした。その他の条件は、本文に記載しています。データは ACQUITY Premier QSM UPLC で収集しました。 

主にトリプトファン残基を高い量子収率で検出する内因性タンパク質の FLR 検出を使用することで、DNA および RNA からの干渉が排除され、mAb の HMWS の検出において、A280 と比較して 10 倍以上のシグナル対ノイズ比(S/N)が得られます(図 2)。このような S/N 比の向上により、A280 では注入量 1.0 µL を使用するのに対し、FLR 検出で使用した注入量が 0.1 µL であることからわかるように(図 2)、より少量のサンプルでの分析が可能になります。またこの例では、A280 検出を使用すると、NTM 中の成分が二量体 HMWS1 の測定を妨害しますが、FLR 検出を使用した場合、これがそれほど顕著ではありません。

図 2.  PBS(mAb)、NTM(NTM+mAb)、スパイクしていない NTM サンプル(NTM)で 1 mg/mL に希釈した精製 mAb(トラスツズマブ-anns)サンプルの SEC-FLR クロマトグラム。その他の条件は本文および図 1 に記載しています。注入量は 0.1 µL でした。これらのデータは、ACQUITY Premier QSM UPLC で収集しました。

分析法の評価

細胞培養サンプル中の 0.25 mg/mL ~ 4.0 mg/mL の mAb の力価を、FLR 検出または A280 検出を使用してうまく測定できました。A280 検出および FLR 検出のため、PBS および NTM で mAb を段階希釈し、0.1 µL を注入しました。さらに、PBS サンプルについて注入量 1.0 µL を A280 を使用して評価しました。NTM および PBS で希釈したサンプルを 0.1 µL 注入して得られたクロマトグラムを図 3 に示します。PBS で希釈した mAb サンプルには垂線を引くライン波形解析を使用し、NTM で希釈した mAb サンプルには接線スキム波形解析を使用しました。次に、NTM サンプル中の mAb の力価を、PBS での検量線を使用して算出し、目標値との相関を調べました(図 4)。スパイク済み NTM サンプルの力価のいずれの測定値も、相関プロットの傾きに基づくバイアスが最小で、予想値からの全体的な偏差が最小(3.2% 以下)でした。この結果は、A280 検出または FLR 検出のいずれかを使用し、わずか 0.1 µL の注入量で、細胞培養中の mAb の力価を直接測定できることを実証しています。

図 3.  PBS および NTM で 4.0、2.0、1.0、0.5、0.25 mg/mL に段階希釈した精製 mAb(トラスツズマブ-anns)サンプルの SEC-UV クロマトグラムおよび SEC-FLR クロマトグラムの重ね描き。流速は 1.0 mL/分(分析時間 2.4 分)で、注入量は 0.1 µL でした。その他の条件は本文および図 1 に記載しています。データは ACQUITY Premier QSM UPLC で収集しました。
図 4.SEC-UV および SEC-FLR の定量的力価(左 y 軸)測定機能が、細胞培養サンプルについて、予測値と相関する形で実証されています。予測値は、PBS で希釈した mAb 医薬品を使用して作成した検量線に基づいています。SEC-UV クロマトグラムおよび SEC-FLR クロマトグラムを図 3 に示します。第 2(右)Y 軸に示したのは予測値からの偏差(%)で、オレンジ色の破線は偏差なしのレベルを示します。詳細な説明および情報については、本文を参照してください。 

次に、上記の実験データに基づく NTM および PBS 中の二量体 HMWS1 の定量を評価しました(図 3 および図 5)。A280 検出を使用した場合、多量体である HMWS(HMWS2)は、使用した mAb サンプル中に検出可能なレベルで存在せず、注入量 0.1 µL では HMWS1 を定量できませんでした。PBS サンプルについて HMWS1 の定量を比較すると、A280 で測定した場合の HMWS1 の平均相対存在量(0.25 mg/mL のサンプルを除く)は 0.93%(注入量 1.0 µL、クロマトグラムは示していません)で、FLR では 0.92% でした。0.25 mg/mL サンプルの HMWS1 の測定では、この平均値からの有意な正の偏差が認められました。このうち一部は波形解析のアーティファクトであり、この分析法の定量限界(LOQ)を示している可能性があります。

NTM サンプル中の HMWS1 の相対存在量は、mAb 濃度 0.5 mg/mL で一貫していました。FLR ではこれより多くなりましたが、PBS サンプルで観察された相対存在量よりも低い値に留まりました。これは、NTM サンプルには接線スキム波形解析を使用したのに対して、PBS サンプルには垂線を引く波形解析を使用したことと一致しています。このように結果にバイアスがかかっているものの、これらのデータは、FLR 検出によって CHO 細胞培養サンプル中の HMWS1 の量の実際の変化を検出できることを実証しています。

図 5.  SEC-FLR による細胞培養サンプル(NTM FLR)についての HMWS1 の定量的測定値。また、SEC-UV(注入量 1.0 µL)および SEC-FLR を使用して、PBS で希釈した mAb コントロールサンプルについて観測された値もプロットしています。NTM FLR サンプルでは、HMWS1 の存在量の値が一貫して低いことがわかります。詳細な説明および情報については、本文を参照してください。 

多量体である HMWS2 の変化を検出する SEC-FLR 分析法の機能も実証しました。この試験では、濃縮 mAb サンプルを 45 ℃ で一晩撹拌して苛酷処理しました。次に、このサンプルを PBS および NTM で 1.0 mg/mL になるように希釈し、これら 2 つの苛酷処理済みサンプルを、苛酷処理なしのサンプルで希釈(1:3)しました(図 6)。これらの結果では、PBS および NTM で希釈したサンプルの両方で、HMWS2 について妥当な直線的レスポンスが観察されます。ただし、NTM では成分が共溶出するため、NTM 曲線の y 切片が 0.5% になっています。HMWS1 の結果では、NTM サンプルと PBS サンプルにおいて、以前に記載されている結果と一致する同等のレスポンス曲線が見られました。 

まとめると、これらの結果は、提案した SEC 分析法により、清澄化した細胞培養サンプル中の mAb の力価を直接かつ確実に測定できることを実証しています。さらに、かなりのレベルの二量体 HMWS1(1% 以上)および多量体 HMWS2(1.5% 以上)も容易に観察できました。検出限界は、細胞培養条件、mAb の力価、凝集の程度によって異なります。これらの結果は、低生存率(約 90%)の NTM にスパイクした mAb サンプルを使用して得られたものですが、分析法の正確さは、細胞培養サンプルから mAb および凝集した mAb を除去し(例:プロテイン A 捕獲)、次に精製した mAb サンプルを mAb を除去したサンプルにスパイクすることによっても評価できる可能性があります。

図 6.苛酷処理により凝集を誘発した精製 mAb(トラスツズマブ-anns)サンプルの SEC-FLR クロマトグラムの重ね描き。続いて、苛酷処理済みのサンプルを、苛酷処理なしのサンプルで 1:3 に希釈しました(25% 苛酷処理)。サンプル濃度は 1.0 mg/mL で、PBS および NTM の両方での希釈系列を重ね描きしています。データは ACQUITY Premier QSM UPLC で収集しました。HMWS1 および HMWS2 の定量的測定値を、NTM および PBS で希釈したサンプルについてプロットしています。詳細な説明および情報については、本文を参照してください。 

分析法の信頼性

1.0 mg/mL mAb をスパイクした NTM の 500 回以上の連続分析についてカラム性能を評価しました。分析してから 24 時間以内に、サンプルを 103 × g で 3 分間遠心分離し、オートサンプラー内で 6 ~ 8 ℃ に保持しました。注入量は 0.1 µL、流速は 1.0 mL/分でした。細胞培養サンプルの注入に関する主な懸念事項は、微粒子を注入することにより、分離ベッドのフローパターンが乱され、分離能の低下やカラムの化学的汚染が引き起こされる可能性があることです。この試験では、分析カラムの性能に対する影響をより適切に評価するため、ガードカラムは使用しませんでした。PBS で希釈した純粋な mAb の注入を断続的に行って、カラム性能を評価しました(図 7)。試験の経過にわたって、HMWS1 とモノマーの間の分離度(USP HH)の低下がゆっくりではあるものの、確実に認められました。分析が 1000 回を超えた後には、ベースライン分離より低い分離度(Rs < 1.5)になると予測されます。

図 7.  精製 mAb(トラスツズマブ)サンプルを使用した SEC-FLR カラムの寿命のタイムポイントの評価。このサンプルは有効期限をかなり過ぎてから分析したため、HMWS および LMWS の両方のサイズバリアントが相当なレベル(約 1 %)で認められました。データは ACQUITY Premier QSM UPLC で収集しました。HMWS1 とモノマーの間の USP(HH)分離度(Rs)を、タイムポイントに対してプロットしています。詳細な説明および情報については、本文を参照してください。 

カラム寿命を改善できる可能性のある方法の 1 つは、注入する培地サンプルの量を減らすことです。使用する LC システムに指定されている最小注入量は 0.1 µL であるため、1.0 mg/mL mAb を含む NTM サンプルを PBS で段階希釈(1:1)し、FLR 検出のみを使用して分析しました(図 8)。以前に記載したアプローチと同様にデータの評価を行いました(図 4 を参照)。PBS で希釈してスパイクを行った NTM サンプルの力価および HMWS1 存在量の測定値は、4 倍希釈まで一貫していました。ただし、mAb 力価が 1.0 mg/mL で、HMWS1 のレベルが 1% である細胞培養サンプルの場合、HMWS1 のピークが LOQ(S/N = 14)を超えるはずの 1:1 希釈が保守的な希釈率として推奨されます。この希釈により、1 回の分析あたり注入する培養細胞の量が 1/2 に減り、細胞培養成分によるカラム性能の低下が大幅に低減するはずです。力価が高いサンプルや HMWS のレベルが高いサンプルでは、細胞培養サンプルの希釈率を高められる可能性が増大すると考えられます。さらに、本研究では評価していませんが、ガードカラムを取り入れることでも、カラムの汚れを低減できる可能性があります。

図 8.  最初に PBS および NTM で 1.0 mg/mL に希釈し、次に PBS で 0.5、0.25、0.125 mg/mL の濃度にそれぞれ段階希釈した精製 mAb(トラスツズマブ-anns)サンプルの SEC-FLR クロマトグラムの重ね描き。LC 条件およびデータ分析は、図 3 ~ 5 および本文に記載されているとおりです。 

結論

XBridge Premier Protein SEC 250Å、2.5 µm、4.6 × 150 mm カラムで 200 mM AMA 移動相を使用した、流速 1.0 mL/分でのハイスループット(分析時間 2.4 分)SEC 分析法、および事前のタンパク質精製が不要で、清澄化した細胞培養サンプル中のモノクローナル抗体の力価および凝集(HMWS)を同時に分析できる、内因性タンパク質の FLR 検出について説明しました。この分析法は、細胞株の選抜および細胞培養の最適化実験をサポートすることを目的として開発したものです。一方、精製プロセスの開発(例えば、一部のサンプルに培地成分がまだ存在する初期の生成物捕獲ステップなど)をサポートするために展開することもできます。

要約すると、この分析法の感度および分解能は、内因性タンパク質の FLR 検出、およびタンパク質-表面の相互作用が非常に低レベルの LC システムおよび SEC カラムを用いることによって取得可能になります。これにより、mAb の力価および HMWS の顕著な増加(1% ~ 1.5% 以上のレベル)を効果的にモニターできる分析法が得られます。さらに、内径 4.6 mm のカラムに注入する細胞培養サンプルの量を 0.05 µL ~ 0.10 µL に大幅に減らし、抗菌特性のある移動相を使用することにより、カラムの寿命を、ガードカラムを使用せずに分析回数 1000 回超まで延ばすことができます(ガードカラムを使用するとさらに長くなる可能性があります)。この評価では、移動相は 0.1 µm フィルターでろ過滅菌し、サンプルは分析の前に 0.2 µm フィルターでろ過して遠心分離もしていることに注意してください。

謝辞

Albert W. Jiang、Alireza Aghayee、Xiao Dong の各氏に対し、最終的にこのプロジェクトにつながった尽力と発案について感謝いたします。

参考文献

  1. Dunn ZD, Desai J, Leme GM, Stoll DR, Richardson DD.Rapid Two-Dimensional Protein-a Size Exclusion Chromatography of Monoclonal Antibodies for Titer and Aggregation Measurements From Harvested Cell Culture Fluid Samples.MAbs.2020;12(1):1702263.
  2. Paul, A.J., Schwab, K. and Hesse, F., 2014.Direct analysis of mAb aggregates in mammalian cell culture supernatant.BMC biotechnology, 14(1), pp.1–11.
  3. Stephan M. Koza, Albert H. W. Jiang, and Ying Qing Yu, “Rapid SEC-UV Analysis of Monoclonal Antibodies Using Ammonium Acetate Mobile Phases”, Waters Application note, 720007852, 2023.

720007915JA、2023 年 5 月

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