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USP General Chapter <621> Chromatography と Alliance™ iS HPLC System が提供する新しい液体クロマトグラフィーグラジエント許容範囲による分析法の近代化

USP General Chapter <621> Chromatography と Alliance™ iS HPLC System が提供する新しい液体クロマトグラフィーグラジエント許容範囲による分析法の近代化

  • Catharine E. Layton
  • Paul D. Rainville
  • Waters Corporation

体外診断(IVD)目的です。一部の国/地域では提供されていません。

要約

薬局方の分析手順を基本的に変更することなく、クロマトグラフィー試験のさまざまなパラメーターを調整できる範囲が、米国薬局方(USP)General Chapter <621> Chromatography に定義されています。このアプリケーションブリーフでは、この章に記載されているグラジエントメソッドの調整を Alliance™ iS HPLC System と組み合わせて、抗ウイルス薬であるアバカビル硫酸塩の USP モノグラフ分離向けに、カラムサイズとシステムの最新化を行います。 

アプリケーションのメリット

  • 米国薬局方 General Chapter <621> Chromatography グラジエントメソッドの許容範囲を Alliance iS HPLC System と組み合わせることで、規制要件を満たす質のデータが得られる
  • Alliance iS HPLC System ではクロマトグラフィーの背圧限界が拡張されているため、さまざまな最新のカラム寸法を使用して高効率の分離が行え、分析時間、注入量、溶媒が削減できる

はじめに

米国薬局方(USP)のソリューションのポートフォリオにより、品質保証に対応して規制の予測可能性が向上し、製造元が高品質の医薬品、栄養補助食品、食品を販売するのに役立ちます。2022 年 12 月 1 日に、General Chapter <621> Chromatography の統合基準が発表されました。この基準では、欧州薬局方(EuPh)の「2.2.46 Chromatographic Separation Techniques」および日本薬局方(JP)の「2.01 Liquid Chromatography」の文章が USP に取り入れられています。これらの規制ガイダンスを統合することにより、モノグラフを完全に再バリデーションすることなく最新のクロマトグラフィーツールを使用できるため、分析法の柔軟性が向上します。

クロマトグラフィー分離は、カラムハードウェアとシステムハードウェアウェアの両方の影響を受けます。これらのパラメーターは分析法の性能にとってきわめて重要であり、モノグラフのバリデーション後、さまざまな制約により柔軟性が妨げられる可能性があります。例えば、最新の HPLC カラムハードウェアは通常、一連の新しい固定相の置換基のために直径 4.6 mm で提供されていますが、HPLC の粒子径 5 µm を 3.5 µm 以下にすることで、より短時間かつ少ない溶媒で同等の分離が得られます。Alliance iS HPLC System(図 1)などの最新の HPLC システムは、高いクロマトグラフィー分離効率、直感的なタッチスクリーンインターフェース、工具不要のカラムフィッティング、HPLC の動作時背圧限界の拡張を特徴としており、最新のカラムハードウェアの寸法に適合させるためにモノグラフ分析法を調整する際に、信頼できる柔軟性が得られます。

図 1.チューナブル UV 検出器搭載 Alliance iS HPLC System

このアプリケーションノートでは、General Chapter <621> Chromatography に記載されているグラジエントメソッドの許容範囲を採用して、代表的な USP モノグラフのカラムとシステムの両方を最新化します(表 1)。

表 1.この表には、薬局方の分析手順を基本的に変更することなく、クロマトグラフィー試験のさまざまなパラメーターを調整できる範囲が記載されています。赤色のボックスは、このアプリケーションノートで焦点を合わせているパラメーターを示しています。

抗ウイルス化合物であるアバカビル硫酸塩の不純物の分離をこの実験に選択しました。その理由は、このバリデーション済みグラジエントメソッドでは、クロマトグラフィーシステムの適合性基準に基づく、部分的に分離した困難なピークのクリティカルペアが生じるためです。最新のハードウェアの使用を容易にするため、USP <621> に記載されているグラジエントシステムの調整をいくつか行った後、得られたクロマトグラムに、元のモノグラフのシステム適合性要件を満たす機能があるかどうかを調べました。

試料および分析法

USP モノグラフ:

アバカビル硫酸塩、有機不純物

LC システム:

チューナブル UV(TUV)検出器搭載 Alliance iS HPLC System

カラム:

Symmetry™ C18 カラム、3.9 × 150 mm、5 µm、製品番号:WAT046980

Symmetry C18 カラム、4.6 × 150 mm、5 µm、製品番号:WAT045905

Symmetry C18 カラム、4.6 x 100 mm、3.5 µm、製品番号:WAT066220

XBridge™ C18 カラム、4.6 × 100 mm、3.5 µm、製品番号:1860033

XSelect™ HSS™ T3 カラム、4.6 × 150 mm、3.5 µm、製品番号:186004786

ソフトウェア:

Empower™ 4、FR 5、クロマトグラフィーデータシステム(CDS)

サンプル:

アバカビル硫酸塩システム適合性混合液(製品番号:1000500、USP)

結果および考察

体系的アプローチを用いてアバカビル硫酸塩の USP モノグラフ分離を最新化しました。まず、モノグラフカラムを粒子径 5 µm の L1 固定相置換基および 3.9 × 150 mm カラムハードウェアとして特定しました。L1 固定相置換基を備えた最新の直径 4.6 mm で長さ(L) 100 mm および 150 mm のカラムハードウェアを選択して、分析法を最新化しました。カラムの固定相置換基の粒子径(dp)は 5 µm または 3.5 µm でした。すべての例で、モノグラフの比は -25% ~ +50% で、USP <621> ガイダンスの L/dp 比の許容範囲を満たしていました。

流速、注入量、グラジエントの開始時間は、USP <621> ガイダンスに記載されている式を用いて、最新のターゲットカラムに対して数学的に調整しました。まず、式 1 により、流速を調整することで、モノグラフ分離の線速度が維持されました。第 2 に、式 2 に従って注入量を調整して、カラム容量に対する分析種の比が維持されました。最後に、計算したターゲットカラムの流速、長さ、粒子径に応じて、式 3、表 2 でグラジエント開始時間を調整しました。開始時間の調整により、モノグラフ分離で報告されているグラジエント勾配とカラム容量の比が維持されました。USP <621> ガイダンスでは、モノグラフのバリデーション時に指定された場合にシステムのデュエルボリュームを調整できる式 4 が記載されています。アバカビル硫酸塩のモノグラフでは、システムのデュエルボリュームが報告されておらず、分離に初期のアイソクラティックホールド時間が含まれていません。結果として、分析法の最新化においては、計算されたグラジエントの開始時間に対するデュエルボリュームの調整は行いませんでした。

式 1.モノグラフカラムおよび 4.6 × 100 mm、3.5 µm カラムでの流速の調整
式 2.モノグラフカラムおよび 4.6 × 100 mm、3.5 µm カラムでの注入量の調整
式 3.モノグラフカラムおよび 4.6 × 100 mm、3.5 µm カラムでのグラジエントの調整
表 2.乗数によるグラジエント時間の調整
式 4.モノグラフ装置のデュエルボリュームの調整(可能な場合)

ウォーターズの分取 OBD カラムカリキュレーターとカラムカリキュレーター 2.0 の両方を使用して、ターゲットカラムのための手動でのグラジエント計算を確認しました(図 2)。オンラインカリキュレーターにより、調整済みグラジエントの最大グラジエント背圧の推定値が得られるため、これは特に重要でした。この推定は、モノグラフで使用される 85% 有機移動相組成ではなく、100% 有機移動相組成について計算されたものですが、調整済み分析法では Alliance iS HPLC System の背圧限界 10,000 psi を超えないという確信が得られました。

図 2.ウォーターズの分取 OBD カラムカリキュレーターおよびカラムカリキュレーター 2.0 オンライン分析法調整カリキュレーター(www.waters.com) 

モノグラフのシステム適合性不純物混合液(SST)を、調整済みグラジエントと最新化したクロマトグラフィーハードウェアを使用して分析しました。最新のカラム寸法すべてで、未分離アバカビルのクリティカルペアのモノグラフシステム適合性分離要件 NLT 1.5 が正常に満たされました(図 3)。SST の相対保持時間(RRT)を、初期のモノグラフ分離に利用した固定相で得られた RRT と比較したところ、L1 固定相置換基が同じカラムで RRT が最も類似しており、L1 固定相置換基が異なるカラムでは RRT が異なっていました(図 4)。USP <621> に記載されているように、さまざまな置換基を使用した場合、ピークの欠落や逆転が観察されることがあります。そのため、分析法の調整後、クロマトグラフィーピークのアイデンティティーを、別のシステムでの PDA スペクトル分析を用いて確認しました。

図 3.モノグラフと調整済みカラムで得られたクロマトグラムの重ね描き
図 4.システム適合性混合液における不純物の相対保持時間(RRT)の比較

Alliance iS HPLC System を、最新のカラムハードウェアの寸法と組み合わせることにより、バリデーション済みモノグラフ分離に独自のメリットが得られました。LC システムの最新のチューブ径により、従来の HPLC システムの背圧上限がわずか 5,000 psi であったのに対し、最大 10,000 psi の分離時背圧が発生するカラムハードウェアを使用できます。さらに、モノグラフ分析法の粒子径 5 µm を、USP <621> ガイダンスの L/dp 比の要件を維持しつつ、3.5 µm に下げることに成功しました。これらのハードウェアの組み合わせにより、バリデーション済みのモノグラフ分離で、分析時間、注入量、溶媒消費量が大幅に削減できました(表 3)。

表 3.Alliance iS HPLC System と組み合わせた場合の、最新のカラムハードウェアクロマトグラフィーのメリット

結論

USP モノグラフグラジエント分離は、General Chapter <621> Chromatography(2022 年 12 月 1 日)に従って、Alliance iS HPLC System でシステム適合性許容基準を維持するように調整できます。使いやすい Alliance iS HPLC System は、直感的なタッチスクリーンインターフェースを備えており、これを使用してバリデーション済みモノグラフのシステム適合性を損なうことなくカラムを最新化できます。このシステムのハードウェアにより、さまざまな最新の HPLC カラム径に対応する動作時背圧上限が提供され、これにより、分析時間、注入量、溶媒消費量の削減などのクロマトグラフィーでのメリットが得られました。 

参考文献

  1. General Chapter <621> Chromatography, Official Date: 01-Dec-2022, www.USP.org, referenced 01/06/2023.
  2. Abacavir Sulfate Monograph official 01-May-2020, www.uspnf.com, referenced 01/06/2023.
  3. Preparative OBD Column Calculator, www.waters.com, accessed 01/06/2023.
  4. Columns Calculator 2.0, www.waters.com, accessed 01/06/2023.

720007865JA、2023 年 2 月

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