遊離糖鎖分析のための HILIC 分析法の ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムから Arc Premier システムへの移行
要約
バイオ医薬品の開発および製造においては、異なる LC プラットホーム間で分析法が頻繁に移行されます。このような場合、異なる LC プラットホームでも性能と結果が確実に維持されるようにするために、同等性試験を通常行います。MaxPeak High Performance Surfaces を採用した Arc Premier システムは、開発および製造活動をサポートする柔軟な LC プラットホームとして最近導入されました。遊離糖鎖分析のための HILIC 分析法を ACQUITY UPLC H-Class Bio PLUS システムから Arc Premierシステムに移行したところ、両者で同等の結果が示されました。ピーク面積割合と相対保持時間の違いは、2 つのプラットホーム間で最小限に抑えられました。Arc Premier システムでは、高度にシアル化された糖鎖分子種の回収率が 3 倍向上しており、MaxPeak High Performance Surfaces によってアッセイ結果の信頼性が向上することが実証されました。移行した分析法で同等の結果が示されたこと、および金属に吸着しやすい分析種の回収率が向上したことから、Arc Premier システムがバイオ医薬品の開発と製造における分析ニーズをサポートするのによく適していることが実証されました。
アプリケーションのメリット
- ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムから移行した分析法で同等の性能が得られたことで、Arc Premier システムの柔軟性を実証
- MaxPeak High Performance Surfaces を採用した Arc Premier システムでは、高度にシアル化された糖鎖の回収率が従来のステンレススチール製システムと比較して向上
はじめに
一般に、バイオ医薬品業界の LC 装置ラインナップは、性能や仕様が多様な幅広い設定に対応しています。これは一部には設計によるものです。ラボの装置のニーズは、上流から下流の活動に至るまで組織全体にわたって多様であるためです。2 種類の LC プラットホーム間で分析法を移行する場合、性能仕様の違いがアッセイ結果に影響を与える可能性があるため、この点を考慮に入れる必要があります。同様に、古いテクノロジーを新しい装置に置き換えると、ハードウェアの設計と性能の違いにより、アッセイ結果に影響が出る可能性があります。このような場合、結果の一貫性と、LC プラットホームにわたる性能基準の維持を確保するため、同等性試験がしばしば行われます。最近ウォーターズは、MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーを特徴とする Arc Premier システムを導入しました。Arc Premier システムは、複数のラボ全体で容易に展開できる柔軟な LC プラットホームとして設計されており、金属に吸着しやすい分析種に対する性能向上により、開発および製造活動が円滑になります。これを実現するために、LC 流路内で起こる金属に吸着しやすい分析種の分析種/表面間相互作用を最小限に抑えるように設計された革新的な MaxPeak HPS テクノロジーが導入されています1。 Arc Premier システムが、医薬品開発および製造活動をサポートするのに最適な LC プラットホームであり、金属に吸着しやすい分析種に対する性能向上を実証するため、元々 ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムで開発された HILIC 分析法を Arc Premier システムに移行しました。2 つのシステム間の性能の同等性について、遊離糖鎖分析の結果を評価しました。
結果および考察
バイオ医薬品の開発および製造においては、ラボ内またはラボ間での分析法の移行が頻繁に行われます。開発プロセスの一環として、潜在的な重要品質特性を特定およびモニターして、製造プロセスが管理されていて再現性があることを確認します。この点について、異なる LC プラットホーム間でメソッドを移行する場合は、結果が医薬品の組成を正確に反映するように、アッセイ結果が一貫している必要があります。HILIC ベースのアッセイは、治療薬のグリコシル化プロファイルの特性解析およびモニタリングの上流と下流の両方の活動で頻繁に使用されていることから、開発と製造活動をサポートする適切な LC プラットホームとしての Arc Premier システムの評価を行う上で理想的なケーススタディーになります。この試験では、ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムで開発された Waters RapiFluor-MS(RFMS)糖鎖標準試料(製品番号:186007983)の HILIC 分離を、Arc Premier システムに移行する代表的な分析法として使用しました。同等の性能が得られるかどうかを調査するため、HILIC 分析法をスケーリングして ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムから Arc Premier システムに移行し、チューブ数の増加と Arc Premier システムに最適なカラム型式に対応させました。図 1 に示すように、サンプルの線速度を維持するために 80 分にスケーリングした分析法を用いて、内径 4.6 mm の XBridge Premier BEH Amide カラム(製品番号:186009946)を使用した両システム間で同等のグリコシル化プロファイルが得られました。各システムにおけるピークの % 面積と相対保持時間を用いて、分析法の同等性をさらに評価しました。
図 2 に示すように、ピーク面積と相対保持時間のいずれも両方のシステムの間で同等です。全糖鎖分子種のピークの % 面積の差は 2% 以内、存在量の少ない分子種(ピークの % 面積 1% 未満)では 0.1% 以内でした。相対保持時間の値は、スケーリングされた分析法において +/- 2 秒以内でした。Arc Premier システムでは、パーセント相対標準偏差が、ピークの % 面積で 1% 未満、相対保持時間で 0.1% 未満という非常に一貫性のある結果が得られました。さらに、Arc Premier システムでは、高度にシアル化された糖鎖の回収率における最大 3 倍の増加も認められました(図 1 のピーク 17 ~ 19)。シアル化糖鎖は移動相の pH 4.5 で負電荷を持ち、分析種/表面間相互作用による金属誘起性吸着のアーティファクトの影響を受けやすいため、この結果は予想の範囲内でした2。 これらの金属の影響を受けやすい分子種の回収率が向上したことから、MaxPeak HPS テクノロジーを活用して、医薬品の組成を正確に反映したクロマトグラフィー性能とアッセイ結果が向上することが実証されました。この試験により、Arc Premier システムにおいて、ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムから移行した方法で同等の性能が得られ、本製品がバイオ医薬品の開発および製造の活動のサポートによく適していることが示されました。
結論
分析法の移行は、バイオ医薬品の開発における重要なプロセスであり、分析法のライフサイクル管理の一部です。分析法の移行を成功させるには、メソッドのライフサイクル全体を通じて同等の性能を維持する必要があります。Arc Premier システムにおいて、ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システムから移行した HILIC メソッドを使用して、一貫したピークの % 面積と相対保持時間の結果が得られました。これにより、Arc Premier システムがバイオ医薬品の開発および製造活動をサポートするのに適していることが示されました。
参考文献
- M. Lauber, T. H. Walter, M. Gilar, M. DeLano, C. Boissel, K. Smith, R. Birdsall, P. Rainville, J. Belanger, K. Wyndham.Low Adsorption HPLC Columns Based on MaxPeak High Performance Surfaces.Waters Application Note.720006930EN, 2021.
- Ippoliti S, Yu YQ, Chen W. Improved Recovery and Peak Shape of Sialylated O-glycopeptides of Erythropoietin (EPO) with ACQUITY Premier CSH Column.Waters Application Note.720007227EN, 2021.
720007389JA、2021 年 9 月