• アプリケーションノート

MaxPeak HPS テクノロジーを用いたオリゴヌクレオチド不純物の回収と定量の向上

MaxPeak HPS テクノロジーを用いたオリゴヌクレオチド不純物の回収と定量の向上

  • Brooke M. Koshel
  • Robert E. Birdsall
  • Ying Qing Yu
  • Waters Corporation

要約

イオン対逆相クロマトグラフィーは、合成オリゴヌクレオチド不純物の分離に一般に使用される手法です。オリゴヌクレオチドの分析は、従来のイオン対分析法条件を使用する場合に、金属表面に対する高い親和性のために非常に困難であることが知られています。ACQUITY Premier カラムおよび LC システムは、オリゴヌクレオチドなどの金属の影響を受けやすい分析種の分析でのばらつきに対処するために、MaxPeak High Performance Surfaces テクノロジーを使用して設計されています。ACQUITY Premier ソリューションは、ステンレススチール製カラムや金属からなる LC システムに必要なコンディショニングや不動態化を必要とせず、準備不要で望みの性能を提供します。さらに、ACQUITY Premier ソリューションでは、回収率が向上し、検出感度および検出限界が向上し、光学ワークフローでの微量レベルの不純物の定量の信頼性が増すことが実証されています。

アプリケーションのメリット

  • コンディショニングや不動態化の必要がなく、準備不要で得られる望みの性能
  • 直線性の向上によるダイナミックレンジの拡張
  • 微量レベルの不純物に対する再現性および定量の強化
  • 評価対象のすべての種類のオリゴヌクレオチドの回収率が向上

はじめに

新しい治療法が探求され、市場に投入されるにつれて、核酸治療は人々の関心を引き起こし続けています。核酸治療薬には合成オリゴヌクレオチドが含まれます。合成オリゴヌクレオチドは、伸長鎖に次の 1 個のヌクレオチドを結合させる一連のカップリング反応によって合成されます。化学合成の性質上、不純物の種類は多くの場合予測可能ですが、オリゴヌクレオチドの長さが長くなるにつれて、不純物プロファイルはより複雑になります。これらの不純物から対象の分析種を分離および精製することは、開発および製造の活動にとって非常に重要ですが、これには課題がないわけではありません。

イオン対逆相クロマトグラフィー(IP-RP)は、オリゴヌクレオチド分析に最適な方法です。一般的な分析法条件は pH 約 7 または 8 で行われますが、オリゴヌクレオチドは極度に酸性であり、従来の条件を使用する場合は脱プロトン化されます。オリゴヌクレオチドの負に帯電したリン酸主鎖では、ステンレススチール製カラムおよび LC 流路の金属表面とのイオン相互作用によって、非特異的吸着が起こりやすくなっています。これがピーク形状や回収の低下につながり、信頼できる定量が困難になります。これは微量レベルの分子種に特に当てはまります。塩基、糖、または主鎖に対する共役や修飾がオリゴヌクレオチド構造に取り込まれている場合に、これらの改変によって金属表面の親和性が増大することがあり、非特異的吸着がさらに大きな問題になることがあります。ラボでは、カラムと LC システムのコンディショニングや不動態化、移動相への金属キレート剤の追加など、この現象を軽減するためのさまざまな戦略が採用されます。一般に、コンディショニングや不動態化は、分析種を繰り返し注入することで、金属表面の活性部位をブロックすることを指します。リン酸溶液を使用する LC システムの化学的不動態化は、特に影響を受けやすい分析種を扱う場合に使用することがある、より積極的なアプローチです。これらの手法は、一時的な解決策になる場合がありますが、面倒で永続的ではありません。

MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーは、金属表面と分析種の間に有機/無機バリアを提供することにより、金属の影響を受けやすい分析種の分析でのばらつきを低減するために開発されました1。ACQUITY Premier カラムおよび ACQUITY Premier システムは MaxPeak HPS テクノロジーを使用して設計され、この両者により、ACQUITY Premier ソリューションが形成されます。この研究では、非特異的吸着に関連する課題に対処するため、ACQUITY Premier ソリューションを、オリゴヌクレオチドの UV ベースの分析用の、従来のステンレススチール製カラムや金属からなる LC システムと比較して評価しています。ACQUITY Premier ソリューションにより、感度と回収率が増加し、定量の再現性向上がもたらされます。最終的に、結果に対する信頼性を高めることができ、その一方で表面のコンディショニングや不動態化に余計な時間を費やす必要性を回避できます。

実験方法

サンプルの説明

すべての分析種とそれぞれの配列が、表 1 に示されています。各分析種の高濃度のストック溶液を調製し、対応する図に示されているようにさらに希釈しました。

表 1.オリゴヌクレオチド分析種および配列の情報。Waters MassPREP オリゴヌクレオチド標準試料(製品番号:186004135)には、15、20、25、30、35 ヌクレオチド(nt)の長いオリゴデオキシチミジンがそれぞれ約 1 nmol 含まれており、これを 250 μL に再溶解して濃度 4 μM にしました。蛍光色素複合体(FAM-25mer)およびシアニン色素複合体(Cy3-25mer)のストック溶液は、100 μM に調製しました。完全にホスホチオエート化したアンチセンスオリゴヌクレオチド GEM91 は、130 μM に調製しました。ストック溶液は、分析用にさらに希釈しました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class Plus Bio バイナリーシステム

ACQUITY Premier システム

カラム:

ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 カラム、130 Å、1.7 μm、2.1 × 50 mm(製品番号:186003949)

ACQUITY Premier Oligonucleotide C18 カラム、130 Å、1.7 µm、2.1 mm × 50 mm(製品番号: 186009484)

波長:

260 nm での TUV 検出

注入量:

4 μL

カラム温度:

60 ℃

流量:

0.200 mL/分

図 1:

移動相 A:

100 mM TEAA、pH 約 7

移動相 B:

アセトニトリル

グラジエント:

FAM-25mer:10 分間で 9 ~ 19% B

図 2、3、4:

移動相 A:

8.6 mM TEA、100 mM HFIP、pH 約 8.25

移動相 B:

メタノール

グラジエント:

OST 標準試料:10 分間で 12–22% B

FAM-25mer:10 分間で 14–24% B

Cy3-25mer:10 分間で 21–31% B

PS:110 分間で

データ管理

Empower 3 クロマトグラフィーデータソフトウェア FR4(特に明記されていない場合)

結果および考察

コンディショニングおよび不動態化の要件の回避:ステンレススチール製カラムと ACQUITY Premier カラムテクノロジーの評価

オリゴヌクレオチドなどの金属の影響を受けやすい分析種を扱う場合、カラムおよび LC システムの両方を不動態化またはコンディショニングすることは、望ましい結果を得るための重要な検討事項です。適切なコンディショニングや不動態化を行わないと、分析種が金属表面の活性部位と相互作用し、ピーク形状の歪み、回収率低下につながる可能性があります。新しいステンレススチール製カラムを初めて使用する場合、一連の注入にわたってこれらの活性部位が飽和するまでピーク面積が増加し、その後、ピーク面積の再現性が良くなると予想されます。

図 1 では、TEAA イオン対システムを使用し、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドのハイスループットのルーチン分析に使用されていたステンレススチール製カラムと使い込まれた LC システムを使用して、FAM-25mer の不純物を分離しました。予想どおり、表面が分析種によって効果的にコンディショニングまたは不動態化されるまで、一連の注入にわたってピーク面積が増加するのが観察されました(図 1A、挿入図)。ただし、カラムを適切にコンディショニングしても、FAM-25mer の n-1 不純物の回収は認められませんでした(図 1A)。この同じ LC システムを ACQUITY Premier カラムで使用すると、n-1 不純物およびメインピークのショルダー前部にある追加の未同定の不純物を分離できました(図 1B)。TEAA は MS 検出には適さないため、n-1 不純物の同定はスパイクイン試験によって確認しました(データは示されていません)。n-1 不純物の存在量は約 0.1% と算出され、6 回の注入にわたるパーセント RSD は 2.4% でした。これにより、低濃度の不純物を最初の注入から確実に定量できることが示されています。図 1B の挿入図に、メインピークのピーク面積も一連の注入にわたって維持されることが示されており、ステンレススチール製カラムを使用した場合に観察されるコンディショニング効果がありません。このことは、ACQUITY Premier カラムの準備不要な性能を示しており、ステンレススチール製カラムでは必要な、一部の分析種を犠牲にするコンディショニングが回避されます。  

図 1.ステンレススチール製カラムと従来の LC システムでは、FAM-25mer の n-1 不純物の分離で最適な結果を達成するために、適切なコンディショニングと不動態化が必要です。1A.ステンレススチール製カラムを使用する場合、一連の注入にわたって、金属表面の活性部位がブロックされるまで、メインピークのピーク面積が増加することが示されています(挿入図)。クロマトグラムから、その後注入してカラムをコンディショニングしても、n-1 不純物を回収できていません。1B.ACQUITY Premier カラムにより、準備不要の性能が得られ、コンディショニングの必要性が回避されます(挿入図)。n-1 不純物は、6 回の注入にわたり、約 0.1% の量で RSD 2.4% で定量できます。1C:n-1 不純物は、LC システムを不動態化した後にのみ回収できます。このことは、分析種がカラムと LC システムの両方で損失することを示唆しています。挿入図では、酸による不動態化の前にカラムがコンディショニングされているため、メインピークのピーク面積が、一連の注入にわたって維持されています。

分析法条件:FAM-25mer のストック溶液を 2.22 pmol/μL に希釈しました。MPA:100 mM TEAA、pH 約 7。MPB:アセトニトリル。グラジエント条件:9 ~ 19% B 10 分。カラム温度:60 ℃。検出:260 nm。データは MassLynx v4.2 SCN 993 で収集しました。

従来のステンレススチール製カラムを使用する場合、n-1 不純物を回収するために、LC システムを 30% リン酸溶液を用いて不動態化しました。LC 表面の不動態化にリン酸がよく使用されますが、これは非常にアグレッシブな処理であり、慎重に行う必要があります。システムから微量の酸を除去するために、LC システムを最大 24 時間水でフラッシュ洗浄することも不可欠です。カラムの適切なコンディショニングと酸のフラッシュ洗浄の両方を行った後にのみ、n-1 のピーク(および追加のショルダーピーク)を正常な状態に戻すことできました(図 1C)。ACQUITY Premier カラムを使用して得られた結果と同様に、n-1 ピークの存在量は約 0.1% で、一連の注入にわたるパーセント RSD は 4.6% でした。ステンレススチール製カラムでの結果が LC システムの不動態化によって向上したことは、システムとカラムの表面の両方を分析種によって不動態化した後でも、金属製の LC コンポーネントとカラムによる分析種の観察可能な損失があることを示しています。このことは、ACQUITY Premier カラムを ACQUITY Premier システムと組み合わせて使用すると、さらに回収率が向上することを示唆しています。

MaxPeak HPS テクノロジーによるダイナミックレンジの拡大と直線性の向上:カラムおよび LC システムのサンプル損失への寄与の理解

分析種の流路の表面積は、ステンレススチール製カラムよりかなり小さいですが、前の例から、ACQUITY Premier システムと ACQUITY Premier カラムの組み合わせを利用することで、最適な回収を達成できることが示唆されています。カラムとシステムのそれぞれに起因する影響を評価するため、TEA-HFIP 中の GEM91 の一連の希釈を、次記の 3 種類の条件のセットで評価しました:ステンレススチール製カラムと従来のシステム、ACQUITY Premier カラムと従来型システム、ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システム。GEM91 のストック溶液をさらに 2.6 pmol/μL に希釈し、分析種が検出されなくなるまで 3 回繰り返し注入しました(SNR<3)。すべてのカラムは使用前にコンディショニングしました。ACQUITY Premier カラムにはコンディショニングは必要ではありませんが、ステンレススチール製カラムと ACQUITY Premier カラムの間で、一連の注入の一貫性を維持しました。この一連の希釈を、ステンレススチール製カラムと従来のシステムおよび ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムを使用して、同じサンプル前処理と移動相を用いて、同じ日に分析しました。従来のシステムでの ACQUITY Premier カラムは、可能性のある劣化を回避するために、新たなサンプル前処理と新鮮な移動相を使用して 2 日目に分析しました。表 2 に、3 回繰り返し注入にわたる平均ピーク面積と、3 種類の条件セットそれぞれの対応するパーセント RSD(%)が示されています。ステンレススチール製カラムと従来のシステムでは、一連の希釈全体にわたって回収率(ピーク面積によって決定)が最低であることが示されています。回収率は、従来のシステムで ACQUITY Premier カラムを使用すると増加しますが、ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムの両方を使用した場合に最大になります。ACQUITY Premier ソリューション全体を使用した場合に、一連の希釈全体にわたって、大きな回収率により、検出限界が低く、パーセント RSD(%)も低くなります。

表 2.GEM91 の一連の希釈のダイナミックレンジ。検出限界の最小値は、ACQUITY Premier ソリューション(ACQUITY Premier カラムおよび ACQUITY Premier システム)を使用した場合に達成されます。さらに、低質量負荷量でも一連の希釈全体にわたってパーセント RSD が低いことから明らかなように、ACQUITY Premier ソリューションを使用することで定量データの再現性が向上します。

分析法条件:GEM91 のストック溶液を 2.6 pmol/μL に希釈し、一連の 2 倍希釈を分析種が検出されなくなるまで分析しました。MPA:8.6 mM TEA、100 mM HFIP、pH 約 8.25。MPB:メタノール。グラジエント条件:14 ~ 24% B 10 分。カラム温度:60 ℃。検出:260 nm。データは、Empower 3 FR4 で収集しました。

これらの結果は、一連の希釈それぞれの検量線を使用してさらに調査し、ダイナミックレンジを評価できます(図 2 および 3)。まず各データセットの検量線を一度にプロットすることで、各検量線の異なる傾きを観察できます(図 2)。これにより、一部の分析種を犠牲にしてカラムおよびシステムをコンディショニングおよび不動態化した場合でも、分析種の回収に差異があることが示されています。検量線が直線的で R 2 乗値が 1 に近いように見えますが、各データセットを個別にプロットして、プロットをスケーリングして低質量負荷量を表示すると、ステンレススチール製カラムとシステムでは、低質量のデータポイントにわたって直線性はありません(図 3)。回収は、ACQUITY Premier カラムと従来型システムの使用で向上していますが、ACQUITY Premier システムを取り入れることでさらに向上しています。ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムの組み合わせにより、ダイナミックレンジ全体にわたって最高の直線性、最低の検出限界、最高の再現性(最低のパーセント RSD)が得られます。このことは、回収は 0.1% レベルでの検出にも関連付けることができ(示されているピーク面積の最大値と最小値が、面積カウントで 254,558 対 257)、従来のシステムとカラムではわずか 2 桁の大きさであるのに対して検出範囲はほぼ 3 桁であるため、不純物分析では重要になります。これにより、微量の不純物をより信頼性高く検出および定量できます。これをサポートできるのは、ACQUITY Premier ソリューションのみです。

図 2.ステンレススチール製カラムと従来型システム(赤)、ACQUITY Premier カラムと従来型システム(青)、ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システム(紫)を使用した、GEM91 の検量線。プロットには、表 2 に示されているピーク面積が使用されています。傾きの相違により、試験したカラムとシステムを使用した場合の回収に明確な差異があることが、示されています。

分析法条件:GEM91 のストック溶液を 2.6 pmol/μL に希釈し、一連の 2 倍希釈を分析種が検出されなくなるまで分析しました。MPA:8.6 mM TEA、100 mM HFIP、pH 約 8.25。MPB:メタノール。グラジエント条件:14 ~ 24% B 10 分。カラム温度:60 ℃。検出:260 nm。データは、Empower 3 FR4 で収集しました。

図 3.ステンレススチール製カラムとシステム(3A)、ACQUITY Premier カラムと従来型システム(3B)、ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システム(3C)を使用した場合の GEM91 の一連の希釈のダイナミックレンジプロット。プロットには、表 2 に示されているピーク面積が使用されています。線形回帰はすべてのデータポイントを通っていますが、データは、低質量負荷量での偏差を強調するようにスケーリングされています。

分析法条件:GEM91 のストック溶液を 2.6 pmol/μL に希釈し、一連の 2 倍希釈を分析種が検出されなくなるまで分析しました。MPA:8.6 mM TEA、100 mM HFIP、pH 約 8.25。MPB:メタノール。グラジエント条件:14 ~ 24% B 10 分。カラム温度:60 ℃。検出:260 nm。データは、Empower 3 FR4 で収集しました。

さまざまな種類のオリゴヌクレオチドについての MaxPeak HPS テクノロジーと従来のテクノロジーの比較

GEM91 の分析により、ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムの組み合わせでの、従来のテクノロジーと比較した明確なメリットが示されています。このことから、これらのメリットが他の種類のオリゴヌクレオチドでも観察されるかは、興味深いところです。OST 標準試料、FAM-25mer、Cy3-25mer のストック溶液をさらに希釈し、ナノグラム以下の質量負荷量をオンカラムで使用する TEA-HFIP での分離を、従来のテクノロジーと MaxPeak HPS テクノロジーの間で、GEM91 の場合と比較しました。クロマトグラフグラジエントは、10 分間のグラジエントのほぼ中央で分析種が溶出するように調整しました。OST 標準試料、FAM-25mer、GEM-91 では同様のグラジエントを使用し、Cy3-25mer では、メタノール含有量をほぼ 2 倍に増やして溶出する必要がありました。

OST 標準試料は、dT 単位が繰り返すオリゴマーで修飾が含まれていないため、適切に挙動すると予想されるオリゴヌクレオチド分析種として選択しました。リン酸主鎖は別として、これは金属表面に特に強い親和性がないと予想されました。蛍光標識オリゴヌクレオチドは、治療用途よりも生物学的用途でプライマーやプローブに使用されるオリゴヌクレオチドの代表的なものですが、蛍光標識を別として、他のクラスの非修飾オリゴヌクレオチドを代表します。これらの標識は、通常は親水性のオリゴヌクレオチドに、わずかに疎水性なだけの FAM 複合体および高度に疎水性の Cy3 によって疎水性を分け与えることが知られています。これらの色素複合体の疎水性の程度は、文献に十分に記載されていますが、溶出に必要なグラジエントからも明らかです。オリゴヌクレオチドの基剤、糖、主鎖に対する追加の修飾は、金属との結合親和性に影響を与えます2。GEM91 は完全にホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドであり、回収が悪いことが知られています。このことは、上述の一連の希釈の例からも推測できます。

GEM91 と同様に、類似サンプルを、ステンレススチール製カラムと従来のシステム、および ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムで、実験のばらつきを最小限に抑えるために同じサンプル前処理と移動相を使用して同じ日に分析しました。サンプルロードを調整して、ACQUITY Premier ソリューションを用いて分析したすべてのサンプルのピーク面積が同等(約 2000 面積カウント)になるようにしました。これには、カラムや流路の金属表面での分析種の損失がないことを前提にしています。微量レベルの分子種(面積カウントが低い)の回収がより大きな影響を受けるため、これにより、サンプル種類全体にわたる比較がより公平になります。

予想どおり、回収率は分析種によって異なります(図 4)。従来のテクノロジーを MaxPeak HPS テクノロジーと比較すると、OST 標準試料では、短い配列の方が回収率が低いという一般的な傾向が示されました。従来のテクノロジーと MaxPeak HPS テクノロジーの間のピーク面積の差は、15 mer で約 2 倍でした。MaxPeak HPS テクノロジーでは、標準試料中のすべての分子種の面積カウントの増加が示されていますが、長いオリゴヌクレオチドの方が非特異的吸着の影響を受けにくくなっていました。クロマトグラム全体にわたる不良配列も、MaxPeak HPS テクノロジーを使用した方が従来のテクノロジーと比較して、より識別可能です。

図 4.ACQUITY Premier ソリューションでは、ナノグラム以下の質量負荷量でのさまざまなオリゴヌクレオチドの回収率が高いことが示されています。サンプルの種類にわたるアライメントがよくなるように、サンプルロードを調整して、ACQUITY Premier ソリューションを使用した場合のピーク面積が結果全体にわたって同等(約 2000 面積カウント)になるようにしました。最終的な質量負荷量は、オンカラムで約 0.3 ~ 0.6 ng でした。ACQUITY Premier クロマトグラムは、従来のテクノロジーでは見えない不純物が存在する箇所が、赤色の矢印で強調表示されています。これらは、OST 標準試料への追加であり、ACQUITY Premier ソリューションを使用した場合に検出されなかった配列もより適切に回収されています。(従来のカラムおよび LC システムのすべてのデータセットにブランク減算を使用し、RT はデータが見やすいようにアライメントしています)。

修飾オリゴヌクレオチドの種類全体にわたって、より顕著な違いが見られます。MaxPeak HPS テクノロジーを使用した場合、FAM-25mer の回収率が 1.6 倍改善されています。これは、MaxPeak HPS テクノロジーを使用して回収率が 1.5 倍改善された、同じ長さの非修飾ポリ dT 標準試料と非常によく似ています。(次記に注意してください:FAM-25mer は TEA-HFIP 中で行われたものであり、図 1 に示されているクロマトグラフィープロファイルは TEAA を使用しているため、これと同じになるとは予想されません)。Cy3-25mer では、MaxPeak HPS テクノロジーを使用してピーク面積は約 2 倍に増大しました。このことは、従来のテクノロジーを使用する場合、このサンプルでは顕著な分析種吸着が生じることを示しています。GEM91 では、前述のように、MaxPeak HPS テクノロジーを使用した場合、回収率が 4 倍向上しています。さらに、クロマトグラムを目視して調べると、MaxPeak HPS テクノロジーを使用すると、従来のテクノロジーと比較して、これらの低質量負荷量で追加の不純物が容易に検出できます。

結論

オリゴヌクレオチドは金属表面に非特異的に吸着するため、特性解析と定量が非常に難しく、特に分析種が微量の場合やサンプルロードが少ない場合に当てはまります。この研究では、ステンレススチール製カラムと金属からなる LC システムを使用した従来の分析と比較して、ACQUITY Premier ソリューションを使用することで不純物の回収率が高まり、より信頼性の高い定量が可能であることを示しました。ACQUITY Premier カラムと ACQUITY Premier システムを組み合わせることで、回収率の向上、検出限界の低減、直線性と再現性の向上が得られ、最高の性能が達成されました。

参考文献

  1. DeLano, M., Walter, T. H., Lauber, M. A., Gilar, M., Jung, M. C., Nguyen, J. M., Boissel, C., Patel, A. V., Bates-Harrison, A., Wyndham, K. D. Using Hybrid Organic-Inorganic Surface Technology to Mitigate Analyte Interactions with Metal Surfaces in UHPLC.Anal.Chem. 2021, Available: https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.analchem.0c05203.
  2. Zhou, W., Saran, R., Liu, J. Metal Sensing by DNA.Chem.Rev. 2017, 117, 12, 8272–8325.

720007238JA、2021 年 11 月 改訂

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