ブタおよびウシの肝臓中のラクトパミンの LC-MS 測定のための改良された固相抽出:Otto SPEcialist を使用した Oasis MCX メソッド
要約
このアプリケーションブリーフでは、ブタおよびウシの肝臓の抽出液から共抽出物を除去するための簡単で迅速で有効なクリーンアップ戦略について説明します。この操作は、検出限界 0.1 ng/g の動物用 β-作動薬、ラクトパミンの総量の UPLC-MS/MS 定量の前に、半自動加圧マニホールドである Otto SPEcialist を用いて処理する Oasis MCX 96 ウェル固相抽出プレートを使用して行います。このメソッドにより、ラクトパミンおよびラクトパミングルクロニドの代謝物が定量され、動物組織中のラクトパミン量が正確に測定されます。96 ウェルプレート型式で Otto SPEcialist を用いてサンプルを処理することにより、サンプルのスループットおよび再現性が向上するだけでなく、手動のバキュームマニホールドを使用する場合に見られる二次汚染のリスクが解消されます。
アプリケーションのメリット
- Oasis MCX 96 ウェルプレートおよび Otto SPEcialist を用いたサンプル処理により、分析対象の β-作動薬の回収率が向上し、ブタ肝臓抽出物のクリーンアップが改善
- Otto SPEcialist 加圧マニホールドにより、ワークフローとデータの処理時間が改善され、分析者は他の業務に集中することができ、同時に分析者間および日間の再現性が向上
- 96 ウェルプレート型式の Otto SPEcialist を使用して前処理したサンプルでは、固相抽出カートリッジ型式の手動バキュームマニホールドを用いて処理する改良メソッドに比べて、面積カウントおよびシグナル対ノイズ比が向上
はじめに
ラクトパミンは、米国およびカナダでウシの成長強化物質として認められている β-アドレナリン薬(β-作動薬)です。ブタ肝臓中のラクトパミンの US MRL(最大残留限度)は 50 ng/g(米国)および 40 ng/g(カナダ)です。EU および世界のその他の地域の多くでは、これらの物質の動物飼育場での使用は許可されていません。一部の国では、これらの化合物に許容範囲ゼロが課されており、輸出するには、ラクトパミンが存在しない(0.1 ng/g(ppb)を下回る)ことを示す分析証明書が必要です。公衆衛生および安全性が確保される役に立つように、人間が消費するために飼育された動物から採取した組織試料中のこれらの化合物の残留量を測定するための、信頼性の高い分析法が必要です。このテクノロジーブリーフでは、ブタおよびウシの肝臓および内臓を使った製品中のラクトパミン測定のための、単純なメタノール抽出、固相抽出によるクリーンアップ、UPLC-MS/MS 分析法について説明します。
実験方法
この試験では、調整した AOAC 分析法 2011.231 によるサンプルのクリーンアップについて説明します。この調整では、バキュームマニホールドが加圧マニホールドである Otto SPEcialist に、Oasis MCX カートリッジが MCX 96 ウェルプレートに換えられています。
サンプル前処理
均質化した 5 g のサンプルを 50 mL の遠心分離チューブに入れます。メタノールを 5 mL 加え、60 秒間ボルテックス混合します。4000 rpm で 5 分間遠心分離します。上清を適切なポリプロピレン製容器に移します(抽出液 1)。ペレットを新しいメタノール 5 mL に再懸濁してからボルテックス混合し、前と同様に遠心分離します。上清を収集し(抽出液 2)、抽出液 1 と混合します。ペレットを 5 mL メタノールに再懸濁してから、前と同様にボルテックス混合および遠心分離します。上清を取り(抽出液 3)、抽出液 1 および 2 と混合します。混合した抽出液の量をメタノールで正確に 20 mL に調整し、5 分間遠心分離します。 混合した抽出液 8 mL を 15 mL チューブに移し、窒素を勢いよく流してメタノールを蒸発させて取り除きます。これを 25 mM 酢酸ナトリウム 0.8 mL に再溶解し、20 μL の β-グルクロニダーゼを加えて、65 ℃ で 2 時間インキュベートします。0.8 mL のメタノールを加え、4000 rpm で 5 分間遠心分離してから固相抽出クリーンアップを行います。
注:この抽出プロトコルによって、ターゲット化合物の良好な回収が得られますが、かなりの量のリン脂質も抽出されます。
コンディショニング: |
1 mL メタノール |
ロード: |
混合した上清すべて(1.62 mL) |
洗浄: |
1 mL メタノール |
溶出: |
5% 水酸化アンモニウムメタノール溶液 0.8 mL |
圧力プロファイルは以下に示されています。
UPLC 条件
LC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class PLUS |
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カラム: |
ACQUITY UPLC BEH、1.7 μm、2.1 × 50 mm |
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移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
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移動相 B: |
LCMS グレードのメタノール |
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注入量: |
4 μL |
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カラム温度: |
40 ℃ |
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弱洗浄溶媒: |
10:90 メタノール:水(600 μL) |
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強洗浄溶媒: |
50:50 メタノール:水(800 μL) |
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シール洗浄溶媒: |
10:90 メタノール:水 |
グラジエントテーブル
MS 条件
質量分析計: |
Xevo TQ-XS |
モード: |
ポジティブイオンエレクトロスプレー、MRM |
イオン源温度: |
150 ℃ |
脱溶媒温度: |
550 ℃ |
脱溶媒ガス流量: |
1,000 L/時間 |
コーンガス流量: |
150 L/時間 |
コリジョンガス流量: |
0.15 mL/分 |
データ管理: |
MassLynx v4.2 |
結果および考察
ラクトパミンの回収率は LC-MS/MS を用いて測定しました。条件は図 2 に示されています。
図 2 に、0.1 ng/g のラクトパミンでスパイクしたブタ肝臓抽出液の 6 回の繰り返し分析で得られた固相抽出での回収率データが示されています。次記の 2 つのメソッドを用いる固相抽出(SPE)をサンプルのクリーンアップに使用します:(A) Oasis MCX カートリッジを取り付けた標準バキュームマニホールドを使用、および (B) Oasx MCX 96 ウェルプレートを取り付けた Otto SPEcialist 半自動加圧マニホールド(PPM)を使用。いずれのメソッドも、優れたラクトパミン回収を達成します。Otto SPEcialist の標準偏差は、Oasis MCX カートリッジの半分を下回っており、データ精度がより高いことが示されています。これは、微量で正確な定量を行うために極めて重要です。抽出前に、標準試料をブタ肝臓マトリックスブランク試料およびサンプルにスパイクしました。
図 3 のクロマトグラムに、クリーンアップ後のマトリックスサンプル中のラクトパミンでの代表的なレスポンスが示されており、この場合、ブタ肝臓中のスパイク濃度は、A および B では 0.1 ng/g に等価、C および D では 0.01 ng/g に等価です。これは、Otto SPEcialist PPM で MCX 96 ウェルプレートを使用して前処理したサンプル(A および C)と、標準のバキュームマニホールドで MCX カートリッジを使用して前処理したサンプル(B および D)の比較です。OttoSPEcialist を使用して前処理したサンプルは、面積カウントが 87% 増加してシグナル/ノイズ比が改善されており、これにより、TargetLynx でピークをより正確に波形解析することができ、分析者がデータを読み取る時間が短縮されます。Oasis MCX カートリッジを使用した場合の面積カウントが小さいのは、サンプル濃縮のための蒸発および再溶解の 2 つの余分のステップによる損失が原因の可能性があります。Otto SPEcialist を使用した溶出ステップの後、回収プレートに蓋をし、0.2 μm フィルターでろ過せずに LC-MS/MS システムに直接挿入しました。これにより、蒸発/濃縮ステップが解消され、消耗品の使用が削減され、処理時間が短縮されます。消耗品である 96 ウェルプレートのもう 1 つの大きなメリットは、手動バキュームマニホールドを使用する場合と比較して、二次汚染のリスクが解消されることです。ハイスループットのラボの場合、Otto SPEcialist の投資回収は数か月程度であり、その後大幅な長期的節約が実現します。
LC グラジエントは、共抽出物によるイオン源および検出器の汚染を低減するために、0 ~ 0.6 分および 2 ~ 4 分の間、廃液に転流されます。これにより、特に図 3D で分かるように、ベースラインが突然上昇します。
結論
- Oasis MCX 96 ウェルプレートを取り付けた加圧マニホールド Otto SPEcialist の使用は、0.1 ng/g のラクトパミンの LC-MS/MS による測定の前に行う、ブタおよびウシの肝臓および内臓のサンプルのメタノール抽出液のクリーンアップおよび濃縮に非常に効果があります。
- Otto SPEcialist でプレートを使用すると、Oasis MCX カートリッジをバキュームマニホールドで使用する場合と比較して、ピークレスポンスとシグナル/ノイズ比が増加し、より迅速に再現性の高い結果が得られます。
- サンプル濃縮用の 0.2 μm フィルターや遠心分離チューブなどの消耗品を使用しないことで、大幅なコスト節減が実現します。
参考文献
- AOAC Official Method 2011.23. Determination and Confirmation of Parent and Total Ractopamine in Bovine, Swine, and Turkey Tissues.
720007443JA、2021 年 12 月