金属と相互作用する化合物(金属感受性分析種)に対する性能が向上するように設計された UPLC カラムファミリーが、最近発表されました。このファミリーには、5 種類の一般的な逆相ケミストリーが含まれています。ウォーターズでは、酸性、塩基性、および中性分析種の混合物を使用して、これらのカラム間の選択性の違いを調査しました。酸性分析種であるヒドロコルチゾンリン酸塩およびデキサメタゾンリン酸塩は、標準のステンレス製カラムを使用して分離した場合、著しいピークテーリングが現れることが分かっています。MaxPeak High Performance Surface(HPS)テクノロジーを採用した新しい PREMIER カラムを使用したところ、これらの金属感受性分析種のピーク形状が大幅に改善されました。幅広い選択性が実証されたことから、PREMIER カラムの固定相を使用することで、さまざまな分析種を含む混合物を分離する方法を開発することができます。
HPLC を使用した金属感受性化合物の分析では、カラムやシステムコンポーネントの構築にステンレスなどの金属を使用しており、それが長年の大きな課題になっていました。金属表面と相互作用する化合物の例としては、1 つ以上のリン酸基またはカルボキシル基(あるいはその両方)を持つ化合物が挙げられます。金属部品との相互作用により、ピークの広がりやテーリング、ピーク面積の減少、注入間のばらつきが生じることが分かります1-3。 これらの相互作用を軽減するために、MaxPeak HPS カラムハードウェアを採用した ACQUITY PREMIER カラムファミリーが開発されました4。 PREMIER カラムファミリーには、逆相アプリケーション向けの 5 種類の一般的な固定相(BEH C18、BEH Shield RP18、HSS T3、CSH C18、および CSH Phenyl-Hexyl)が含まれています。これらの固定相の間の選択性の違いを、酸、塩基、および中性の混合物の分離について比較しました。ヒドロコルチゾンリン酸、デキサメタゾンリン酸などの酸は、金属感受性が高く、標準的なステンレス製カラムを使用して分離するとピークテーリングが問題となります。5 つの固定相それぞれについて、標準的なステンレス製と PREMIER カラムハードウェアの両方を使用して得られた分離を比較しました。結果では、PREMIER カラムハードウェアの利点と、ACQUITY PREMIER カラムファミリーで利用できる逆相の選択性の範囲が示されています。
試験された混合物は、5% アセトニトリル/95% 10 mM ギ酸アンモニウム水溶液(pH 3.00)中に、5 μg/mL チオ尿素、300 μg/mL メトプロロール酒石酸塩、40 μg/mL ジプロピルフタル酸塩、10 μg/mL のアミトリプチリン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾンナトリウムリン酸塩、およびデキサメタゾンナトリウムリン酸塩が含まれていました。ボイドボリューム(V0)のマーカーとしてチオ尿素を使用しました。未使用のカラムで、この混合物の 3 回連続注入を行いました。
LC 条件: |
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システム: |
CM-A および CM-Aux と PDA を搭載した ACQUITY UPLC H-Class |
検出: |
UV @ 254 nm |
カラム: |
多様 |
カラム温度: |
30 ℃ |
カラムの構成: |
2.1 × 50 mm |
サンプル温度: |
20 ℃ |
サンプル注入量: |
2 µL |
流速: |
0.5 mL/分 |
移動相 A: |
10 mM ギ酸アンモニウム水溶液、pH 3 |
移動相 B: |
アセトニトリル |
グラジエント: |
5.3 分で 5~95% B(リニアグラジエント) |
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower 3、Feature Release 4 |
選択性の違いを評価するために使用する化合物の構造を図 1 に示します。これらの化合物のうち 2 つは中性(プレドニゾンおよびジプロピルフタル酸塩)、2 つは使用する分析条件でプロトン化されている塩基(メタプロロールおよびアミトリプチリン)、2 つは酸の塩(ヒドロコルチゾンナトリウムリン酸塩およびデキサメタゾンナトリウムリン酸塩)です。後者の 2 つの化合物は金属感受性で、従来のステンレス製カラムを使用して分離すると、幅広いテーリングピークが出てしまいます。このことは、標準の ACQUITY UPLC カラムを使用して得られた図 2B に示すクロマトグラムで分かります。ACQUITY PREMIER カラムを使用すると、図 2A に示されるように、これらの化合物について幅の狭い対称のピークが得られます。標準カラムと比較して、ACQUITY PREMIER カラムでは、これら 2 つの金属感受性化合物のテーリングファクターが 41 ~ 72% 低減しました。これらの相違では、t 検定を使用した信頼性が 95% を超え、統計的に有意であることが分かりました。また、PREMIER カラムでは、標準カラムよりも 5 ~ 53% 大きいピーク面積が見られました。5% の差を除いて、これらの差は t 検定で統計的に有意であることが分かりました。
図 2 に示すクロマトグラムは、異なる固定相間の保持と選択性に顕著な違いがあることを示しています。表 1 には、試験を行った 5 つの固定相のそれぞれの化学的特性と物理的特性を示しています。これらの特性は、相違を理解する上で大きく役に立ちます。HSS T3 カラムでは、中性化合物および塩基性化合物の保持が最も高くなります。これは、この固定相を作るために使用したシリカ粒子の表面積が大きいことと、T3 結合相の C18 の表面濃度が低いことに起因します5。 BEH Shield RP18、CSH C18、および CSH フェニルヘキシルカラムは、塩基性化合物の保持が最も低いカラムです。これは、BEH Shield RP186 に内包されたカルバメート基が存在し、CSH 固定相に電荷モディファイヤーが存在することに起因します7。CSH カラムは、酸性化合物に対しても最も高い保持率を示します。これは、これらの物質に正の表面電荷が存在するためです。アルキルフェニル結合相を持つ CSH フェニルヘキシルカラムでは、デキサメタゾンリン酸塩(ピーク 3)とプレドニゾン(ピーク 4)の溶出順序が変わります。
この結果では、ACQUITY PREMIER カラムにより、金属感受性の高い分析種のピーク形状の改善が得られたことが示されています。移動相に変更を加えることなく、単純なギ酸アンモニウムバッファー(pH 3)を水系移動相として使用することで、改善が達成されました。また、化学的特性と物理的特性が異なる 5 つの逆相固定相が選択できる、ACQUITY PREMIER カラムファミリーで利用可能な選択性の範囲についても説明しましたこのカラムファミリーは、分析法開発に便利な固定相一式を提供します。特に、1 つ以上の金属感受性化合物を含む混合物を分離する場合に有用となります。
720007014JA、2020 年 9 月