本書はアプリケーションブリーフであり、詳細な実験方法のセクションは含まれていません。
BioAccord™ システムで、糖鎖解析における分析ワークフローを簡素化し、高品質な LC/光学/MS データを取り込み、意義のある結果へと変換できることをご紹介します。
グリコシル化がタンパク質製剤の安全性や有効性に大きな影響を及ぼすことは良く知られており、製剤品質の一貫性を保証するために、製品のライフサイクルを通じてバイオ医薬品の糖鎖プロファイルを解析しモニタリングすることが重要になります。糖鎖プロファイルは、一般的に、蛍光タグで標識された遊離 N-結合型糖鎖を分離することで評価されます。しかしながら、従来の LC-蛍光(FLR)ワークフローでは、特異性に欠けることがあり、より詳細な解析には相補的な技術が必要となります。質量分析(MS)は、重要な構造情報を提供できるため、バイオ医薬品開発における糖鎖特性解析のための相補的な分析技術として広く使用されてきました。
一方、高分解能 MS を使用した複雑な糖鎖サンプルの分析には、通常、装置の操作、メソッドの最適化、およびデータの解釈に精通しているユーザーが必要となります。そのため、ラボでの信頼性と生産性を向上でき、かつ容易に展開できる相補的な検出機能を持ったワークフローは、バイオ医薬品業界において強く求められています。
BioAccord システムは、プロセス開発や製造環境において LC-MS ベースのワークフローを展開する際に、ユーザーエクスペリエンスとアクセシビリティを向上できるよう特別に設計されています。本システムは、光学検出器(TUV または FLR)および ACQUITY RDa 検出器を搭載した ACQUITY UPLC I-Class PLUS システムによって構成され、堅牢な分離と正確な質量情報により、バイオ医薬品の効率的な解析とモニタリングが可能になります。LC-MS システムは、コンプライアンス対応の UNIFI 科学情報システムソフトウェアプラットホームによって制御され、合理的なデータ取得、解析、レポート作成を自動で行います(図 1)。
BioAccord システムによってサポートされる、用途に応じて設計されたワークフローの 1 つとして、遊離糖鎖解析は、高レベルのシアリル化糖鎖を含む複雑な糖鎖構造を有する融合タンパクである ORENCIA(アバタセプト)を使用して、実証しました。図 2 に示したように、N -型糖鎖を遊離させた後、自動サンプル前処理プラットホーム(Andrew Alliance)を使用して GlycoWorks RapiFluor-MS (RFMS) N-Glycan キットによって標識し、その後、150 mm ACQUITY BEH Glycan Amide カラム (製品番号 186004742)で分離し、BioAccord システムによって蛍光(FLR)および MS 検出をタンデムに行いました。UNIFI の「糖鎖 FLR および MS 確認」分析ワークフロー内で、キャリブレーションされた保持時間から変換された GU(グルコース単位)値に基づくピーク同定(3 次スプライン曲線適合)のために、糖鎖 GU ライブラリー検索を自動で行い、その後、正確な質量情報によって確認しました。図 3A は、解析後の FLR トレースを示しており、各ピークが自動的に割り当てられ、糖鎖名、検出された GU 値、および関連する構造情報が注釈付けされています。ACQUITY RDa 検出器によって、0.2%の相対量で存在するマンノース 5 のような重要な糖鎖種に対して、高品質な MS フルスキャンおよび抽出イオンクロマトグラム(XIC)データが得られました(図 3B)。ACQUITY RDa 検出器の高い感度により、31 種類の N -結合型糖鎖を 10 ppm 未満の質量許容差で同定できました。GU 値や質などの裏付けとなる分析情報には、成分サマリーテーブルから簡単にアクセスできます(図 3C)。結論として、これらの結果は、BioAccord システムがバイオ医薬品開発における遊離糖鎖解析の特異性と信頼性を向上させる効率的なソリューションを提供することを示しています。
BioAccord システムは、後期開発および規制下のバイオ医薬品ラボ向けに、シンプルかつ自動のセットアップを通じて生産性を改善できるように設計されました。遊離糖鎖解析ワークフローを使用することで、効率の高い分離と正確な質量情報が得られ、糖鎖の定量分析と構造の割り当てが可能になります。本ワークフローは、コンプライアンス対応のソフトウェアである UNIFI によってシームレスに統合され、規制環境において生産性を損なうことなく、糖鎖解析の信頼性を向上できます。
720006474JA、2019 年 1 月